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2020年10月 2日 (金曜日)

噛めば噛むほど味が出る企画盤

ジョン・スコフィールドのツアーに抜擢されて以降、ジャズ・ドラマーの第一線で活躍してきた「アダム・ナスバウム(Adam Nussbaum)」。1955年、NY生まれ。今年で65歳。知らない間に大ベテランである。ドラマーであるが故、リーダー作は、2018年の『The Lead Belly Project』が初リーダー作。なんと63歳で初めて自らのリーダー作をリリースしたことになる。

Adam Nussbaum『Lead Belly Reimagined』(写真左)。2019年7月16日、NYのホーム・コンサート & パフォーマンス・スペース「SEEDS::Brooklyn」での録音。録音担当はテナー・サックスのオハー・タルマー。ちなみにパーソネルは、Adam Nussbaum (ds), Steve Cardenas (g), Nate Radley (g), Ohad Talmor (ts)。手作り盤の雰囲気満載のナスバウムのリーダー作第2弾である。

この盤は「企画盤」。レッド・ベリー(Lead Belly)の12弦ギターをトレースするという通なコンセプトである。レッド・ベリーは、米国のフォーク & ブルースのミュージシャンである。澄んだ力強い歌声、12弦ギターの技巧が個性。マルチ奏者でもあり、ピアノ、マンドリン、ハーモニカ、ヴァイオリン、そして、アコーディオンも演奏する。米国ルーツ・ミュージックの原点的存在である。
 
 
Lead-belly-reimagined  
 
 
そんなレッド・ベリーの12弦ギターをトレースする。なんとマニアックな企画なんだろう。メンバーは前作同様「不動」のメンバー。こういう企画ものは、演奏メンバーとしては気心知れて、テクニックは優秀、協調性豊かな人材が必要だと思うが、その点、この盤ではメンバーは、前作の同一企画盤The Lead Belly Project』と同じメンバーなので、理想的なメンバーでのパフォーマンスになる。

内容的には一言で言うと「渋い」。演奏形態はハードバップでもモードでも無い。どちらかと言えば「スイング」のノリ、雰囲気がプンプンする。しかし、音作りやアレンジは今様なもので、演奏自体は、4者4様の対等なインタープレイがメイン。この4者4様のインタープレイの雰囲気がどこか「ニューオリンズ・ジャズ」をなんちなく想起させるところがユニーク。米国ルーツ・ミュージックをベースにしてはいるが、ブルース基調の音作りはとにかく「渋い」。

ブルースを基調とし、フォーク・カントリー・スイングを取り込んだモダン・ジャズ。個性的で独特な雰囲気の演奏である。古き良き時代を想起させる米国ルーツ・ミュージックの心象風景。これをジャズで表現するのだから、その独特の雰囲気が堪らない。正直言うと初めて聴いた時はちょっと戸惑う。しかし、2度3度繰り返し聴き返すうちに「癖」になる。噛めば噛むほど味が出る。スルメの様な企画盤である。
 
 
 

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