ECMのフュージョン・ジャズ
この盤を聴いた時、これって何時の録音、これってどこのレーベルのリリース、と思わず資料を見直した。Arild Andersen(アリルド・アンデルセン・写真右)が筆頭リーダー作である。アンデルセンはノルウェー出身のベーシスト。ECMレーベルのハウス・ベーシストの様な存在。ということは、ECMレーベルからのリリースなんだが、出てくる音は「ジャズ・ロック」風。硬派でメインストリーム志向のクロスオーバーな音に思わず身を乗り出す。
Arild Andersen『Molde Concert』(写真左)。1981年8月、ノルウェーの「The Molde Jazz Festival」でのライヴ録音。ちなみにパーソネルは、Arild Andersen (b), Bill Frisell (g), John Taylor (p), Alphonse Mouzon (ds)。しかし、ユニークなカルテット編成。ノルウェー出身の硬派なベーシスト、アンデルセンに、良い意味で変態捻れギタリストのフリゼール、そして、ジャズ・ファンクでならしたムザーンがドラム、そして、モーダルなピアニスト、テイラー。
このユニークな個性の集まりのカルテットが、フリゼールの「攻撃的で切れ味良く捻れる」エレギが8ビートに乗って弾きまくる。バンド全体がこのフリゼールのジャズ・ロックなエレギに引き摺られて、硬派でメインストリーム志向、モーダルで自由度が高い「エレジャズ・ロック」を展開する。音的にはクロスオーバー・ジャズの雰囲気を引き摺っているが、テイラーのピアノは限りなくモーダルで、アンデルセンのベースは明確に「純ジャズ」なベース。
録音年は1981年、フュージョン・ジャズの全盛後期であるが、この盤の「ジャズ・ロック」は大衆に迎合した俗っぽいジャズ・ロックでは無い。リズム&ビートとフレーズの展開は「ジャズ・ロック」風を踏襲してはいるが、演奏内容自体は、モーダルでかなり硬派な純ジャズ志向のパフォーマンスになっている。ムザーンのドラムが元気だ。フリゼールのロックテイストな捻れギターに触発されて、切れ味の良い、アーティスティックな8ビートを叩きだしている。
ECMレーベルらしからぬ、ポジティブで元気なドラム。この盤の内容、ECMレーベルなりのフュージョン・ジャズと感じた。それでも、メインストリーム志向のパフォーマンスは見事。アンデルセンのベースが、このジャズ・ロックな演奏をメインストリーム志向に留めている。強靱で確かなメインストリーム志向のベース。演奏全体のジャズ・ロック志向をものともせず、テイラーのピアノはモーダルなフレーズを叩き出す。
メインストリーム志向のジャズ・ロック、メインストリーム志向のクロスオーバー・ジャズ。全てを聴き終えた後、やはりこの盤の内容は、ECMレーベルならではのフュージョン・ジャズ。しかし、俗っぽくならずに、凛としたメインストリーム志向をしっかりキープしているところは、アンデルセンのベースとテイラーのピアノに因ることが大きい。さすがECMの総帥アイヒャーである。
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