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2020年10月 7日 (水曜日)

西海岸ジャズの「ハードバップ」

ドラムはリズム&ビートを司る打楽器。旋律を奏でることは出来ない。音の表現も限定される。よって、ドラマーのリーダー作は「ドラマーがまとめ役になって、ドラマーが志向するジャズを表現する」ものが多い。アート・ブレイキーがその最たる例である。そうそう、トニー・ウィリアムスもそうだった。おお、マックス・ローチもそうだ。

米国西海岸ジャズの代表的ドラマーとは誰か。まず頭に浮かぶのが「Chico Hamilton(チコ・ハミルトン)」。そして「Shelly Manne(シェリー・マン)」。そして「Stan Levey(スタン・レヴィー)」。今日はこの「スタン・レヴィー」のリーダー作を取り上げる。活動期間が、ほぼ1950年代に限定されるので、そのリーダー作の数はあまり多く無い。

Stan Levey Sextet『Grand Stan』(写真左)。1956年11月、Hollywood での録音。ちなみにパーソネルは、Stan Levey (ds), Leroy Vinnegar (b), Sonny Clark (p), Richie Kamuca (ts), Frank Rosolino (tb), Conte Candoli (tp)。米国西海岸ジャズを代表するメンバー6人によるセクステット編成。しかし、名うての名手達が揃いも揃ったセクステットである。
 
 
Grand-stan-stan-levey  
 
 
とても端正で明るい、テクニックにも優れたドラミング。判り易い、お手本の様なドラム。優れたアレンジの下、優れた演奏テクニックと歌心を駆使して、小粋でお洒落な「聴かせるジャズ」を志向する米国西海岸ジャズにぴったりとフィットするドラミングである。そして、そんなスタン・レヴィーが志向するジャズは「西海岸ジャズにおけるハードバップ」と聴いた。

冒頭の名スタンダード曲「Yesterdays」を聴くと、それが良く判る。西海岸ジャズにありがちな「お洒落で聴き易い」イージーリスニング・ジャズ志向の演奏では無い。硬派でアーティスティックなパフォーマンス。優れたアレンジは西海岸ジャズならでは、であるが、演奏されるジャズの志向は、東海岸ジャズの「ハードバップ」。しかし、東海岸ジャズのそれをなぞるのでは無い。西海岸ジャズの雰囲気がプンプンする「ハードバップ」な音。

回りを固める5人のジャズメンも好演に次ぐ好演。カムカ・ロソリーノ・カンドリのフロント3管はファンクネス控えめの白人らしい、切れ味の良く、明るいユニゾン&ハーモニーを吹き上げる。東海岸に移る前のピアノのソニクラも「若々しい哀愁タッチ」で好演。ビネガーのベースは堅実そのもの。このレヴィーのリーダー作、なかなかの「隠れ好盤」である。
 
 
 

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