スティープルチェイスの「今」
振り返ってみると、1970年代〜1980年代前半にかけて、フュージョン・ジャズの大ブームのお陰で、老舗のジャズ・レーベルについては、大手のコロンビアやヴァーヴなどは、なんとかメインストリーム・ジャズのアルバムをリリースし続けてはいたものの、多くが縮小撤退、若しくは活動中止に追い込まれた。しかし、1980年代半ば、純ジャズ復古によって、ほどんどの老舗レーベルが復活を果たしている。
Ronnie Cuber Quartet『Four』(写真左)。2019年の作品。ちなみにパーソネルは、Ronnie Cuber (bs), Ed Cherry (g), Brian Charette (org), Adam Nussbaum (ds)。最年少が、ブライアン・シャレットの47歳。リーダーのバリサク(バリトン・サックスの略)奏者、ロニー・キューバーは78歳。ベテラン〜レジェンド級のメンバーで固めた、小粋で渋いカルテット演奏である。
リリースは「スティープルチェイス・レーベル」。スティープルチェイスは、マイルス・コレクターとして有名なデンマークのニルス・ウインターが、1972年立ち上げたジャズ・レーベル。1970〜80年代を中心に、ジャズ史に残る名盤を数多く生み出した欧州ジャズ・レーベルの老舗。このレーベルは欧州のレーベルとしては、比較的、米国系のレーベルに近い演奏の色や雰囲気を持っていて、ハードバップ系の演奏に秀作が多い。さしずめ欧州の「ブルーノート」と言っても良い「欧州発ハードバップ」の宝庫。
そんなスティープルチェイスであるが、現在も活動中。結構、渋くて小粋なハードバップなアルバムをリリースするので目が離せない。このキューバーの『Four』も、そんな渋くて小粋なハードバップなアルバムの一枚。ロニー・キューバーのバリサクが実に良い音を出している。キャリア60年以上の中、参加した盤は200枚を超えるらしいが、この盤でも彼のスタイルは全く変わらないし、衰えも見えない。とにかく、心地良い「ブリブリ・ゴリゴリ」の演奏。バックの人選も良い。
スティープルチェイス・レーベルは、欧州の「ブルーノート」と形容されるだけあって、録音の音の雰囲気は統一感があり、ジャケットも質素ではあるが、リーダーやメンバーの顔をあしらった統一感のあるデザイン。この盤もその「スティープルチェイス」色そのものの内容で、伝統的なハードバップ系の音作り。とても安心感のあるスイング感豊かな展開は、ジャズ者一般万民にお勧めである。
最後に選曲もなかなか。フィリー・ジョーの「Battery Blues」、リー・モーガンの「Sidewinder」、ホレス・シルバーの「Motivation」、スタンリー・タレンタインの「Sugar」、スタンダード曲の「Tenderly」「Just Friends」「How High The Moon」等々、なかなか凝った選曲、小粋な選曲も聴きもの。スティープルチェイス・レーベル、まだまだ健在である。
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