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2020年7月28日 (火曜日)

ピアノ・トリオの代表的名盤・84

以前より、我が国では「ピアノ・トリオ」の人気が高い。米国ではそれほどでも無いらしい。米国ではホーンがフロントのジャズが人気。何故かと訊いてみると、判り易いから、だそうだ。ピアノ・トリオは判り難い。それが彼らの言い分。我が国では「ピアノ」は特別な楽器。そのピアノが主役になって奏でられるジャズは特別。加えて、ジャズ・ピアニストには強い個性があって、その個性を感じて愛でる。それが我が国での「ピアノ・トリオ」の楽しみ方。

Walter Bishop Jr.『Speak Low』(写真)。1961年3月14日、NYのBell Sound Studiosでの録音。ちなみにパーソネルは、Walter Bishop Jr. (p), Jimmy Garrison (b), G.T. Hogan (ds)。リーダーのウォルター・ビショップ Jr.は、1927年10月、NY生まれ。1998年1月に70歳で鬼籍に入っている。1949年からジャズの世界で活躍。逝去するまでの約50年の間に残したリーダー作は20作弱。寡作のピアニストである。

確かに寡作のピアニストで、実は「ウォルター・ビショップ Jr.」という名前を聞いて思い浮かぶリーダー作は、この『Speak Low』以外、思いつかない。それもそのはず、他のリーダー作については殆どリイシューされていない。つまりは人気が無い、ということ。というか、「ウォルター・ビショップ Jr.」自体、米国ではマイナーな存在。何故か、我が国だけ、しかもこの『Speak Low』だけが、ジャズ盤紹介本やジャズ雑誌で採り上げられてきた。
 
 
Speak-low  
 
 
リーダーの「ウォルター・ビショップ Jr.」のピアノについては、これと言った強烈な個性は無い。低音を強調した左手が個性と言えば個性だが、その存在感は中途半端。右手は堅実だが「よく回る」ほどでは無い。総合力で勝負するタイプのピアニストではあるが、その総合力も中くらいに位置する程度。ただ強烈な個性が無い分、安心して聴くことのピアノではある。

この盤が我が国で人気なのは、バックのリズム隊、ベースのギャリソンとドラムのホーガンの存在があってのことだろう。この盤でのギャリソンのベースについては、腹を揺すらんばかりの重低音。ソリッドで粘りのある弦の響きは快感ですらある。そして、ホーガンのドラム。堅実かつ実直、メリハリが効いた躍動感溢れるドラミング。このギャリソンとホーガンのリズム隊が、このピアノ・トリオ盤の最大の聴きどころ。

ウォルター・ビショップ Jr.の安心して聴くことの出来るピアノ、そして、強烈なリズム&ビートを供給するリズム隊。この両者のバランスがバッチリ取れて、この盤はピアノ・トリオの類い希な好盤となっているのだ。ピアノ・トリオのもう1つの楽しみ方である「ピアノ・ベース・ドラムの3者一体となったインタープレイ」。それがこの盤では顕著。ピアノ・トリオ好きの我が国のジャズ者の方々には「響く内容」の盤なのだ。
 
 
 

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