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2020年7月29日 (水曜日)

サルダビーの「ソロ&デュオ」盤

1970年代、ジャズ・ピアノの範疇で「ソロ・ピアノ」が流行した。もともと、ソロ・ピアノと言えば、「ジャズ・ピアノの神様」と呼ばれた Art Tatum(アート・テイタム)が有名。あまりの超絶技巧なピアノが故、ついていけるリズム隊がいなかったことが一因だが、1930〜40年代に一世を風靡したのだから、とりわけ新しい演奏フォーマットでは無かった。

特に我が国で、この「ソロ・ピアノ」が流行した。そもそもの切っ掛けは「Keith Jarrett(キース・ジャレット)」。彼がECMレーベルからリリースした、当時LP3枚組の大作『Solo Concerts: Bremen/Lausanne』(1973) と、次作『The Köln Concert』(1975) が大ヒットして以降、我が国ではソロ・ピアノが以上にまで、もてはやされた様に思う。

シンプルなピアノという「旋律楽器と打楽器の両面を併せ持つ」楽器だけのジャズ。これが、ピアニストの個性とテクニックを如実にあぶり出す。これが我が国のジャズ者の方々の吟線に触れた。

さて、ジャズにおける「ソロ・ピアノ」については、キース・ジャレットで決まり、なんて風潮もあるが意外とそうでも無い。数は少ないが、一流のジャズ・ピアニストについてはだいたいが「ソロ・ピアノ」盤をリリースしている。そして、その内容はどれもがかなり充実している。ソロ・ピアノはピアノの基本的なテクニックに関しては、かなり高度なものを要求されるので、当然、そのパフォーマンスの内容は充実する。
 
 
Voyage-mishel-sardaby  
 
 
Michel Sardaby『Voyage』(写真)。1984年3月28日、パリの「Modern Art Musium」でのライヴ録音。ちなみにパーソネルは、Michel Sardaby (p), Ron Carter (b)。マルティニーク島フォールドフランスで生まれ、1967年3月にパリ​​に移住して以降、パリを拠点に活躍している。この盤は、前半はミシェル・サルダビーのソロ、後半がサルダビーとロン・カーターとのデュオ演奏という構成になっている。

ミシェル・サルダビーと言えば、我が国では『Night Cap』(1970) というトリオ盤が唯一有名で、もともとサルダビー自体が寡作の人ということも相まって、その他の盤についてはほとんど情報が無い。しかし、このライヴ盤のソロ・ピアノを聴くと、かなりの力量と個性の持ち主であることが良く判る。

ちょっとクラシックの要素も入った、端正で堅実な「正統ジャズ・ピアノ」。タッチは歯切れが良く、アドリブ・フレーズは流麗。ジャジーな雰囲気はしっかり保持しているので、決して、イージーリスニング風にはならない。なかなか優秀なソロ・ピアノである。

ロン・カーターとのデュオがまた良い。この盤ではロン・カーターのベースが良い。ロンのベースはピッチの合い具合など、盤によって出来不出来があるが、この盤のロンは良い。サルダビーの端正で堅実な「正統ジャズ・ピアノ」に好調なロンのベースがしっくりと絡む。とりわけ、ロンの躍動感溢れる、軽やかなベース・ラインが絡む「Relaxin' at Camarillo」は、サルダビーのピアノも軽快で歯切れが良く、デュオ演奏全体がスインギーで申し分無い。

偶然見つけたサルダビーのソロ&デュオのライヴ盤だったが、これが「当たり」。この盤、サルダビーのピアノの本質が見え隠れして、あまり知られていない盤ですが好盤です。
 
 
 

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