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2020年5月 1日 (金曜日)

テナーのオールド・スタイル

ジャズのテナー・サックスの奏法の流れは大まかに言って以下の様である。ビ・バップでは著名なテナー奏者の目立った活躍は無く、オールドスタイルと呼ばれる、ジャズ・テナーの最初の流行のスタイルを踏襲した、レスター・ヤングやコールマン・ホーキンス、ベン・ウェブスターなどが代表的存在として活躍した。そして、ソニー・ロリンズとジョン・コルトレーンの出現によって、「今」に繋がる、テナー・サックスの奏法が「標準のスタイル」として定着した。

オールド・スタイルとは、音のしゃくりと装飾音、それにヴィブラートが多いのが特徴。いわゆる「ムーディーで色気のある雰囲気」を聴かせるスタイルで、とにかくフレーズが「濃い」。ボボボボ、キュィーンと相当の迫力をもって迫ってくる感じ。日本の歌謡曲でいうと「演歌」。相対する「標準のスタイル」は、オールド・スタイルの特徴が全く排除され、スッと伸びたクールなブロウが特徴。吹く時にオールド・スタイルの様な「装飾」が無いので、速いフレーズや複雑なフレーズが吹きやすい。現代ジャズでは、この2つのスタイルが仲良く共存している。

Coleman Hawkins『Hawkins! Alive! At the Village Gate!』(写真左)。1962年8月13, 15日、NYのライブスポット、ヴィレッジ・ゲイトでのライブ録音。ちなみにパーソネルは、Coleman Hawkins (ts), Tommy Flanagan (p), Major Holley (b), Eddie Locke (ds)。テナー・サックスのオールド・スタイルの代表的存在の一人、コールマン・ホーキンスのリーダー作である。
 
 
Hawkins-alive  
 
 
オールド・スタイルのテナーの音は濃い。ボボボボとリードから息が漏れる音がしたり、「つば」が鳴る音がしたりで、ちょっと汚かったりする。ムーディーではあり、色気のあるブロウなんだが、この「濃さ」が、ジャズ盤として聴く時に、ちょっと耳に付いたりする。その辺が、オールド・スタイルの難点。オールド・スタイルのジャズ・テナーを攻略するには、この「難点」を和らげることが重要になる。そういう点から、このホーキンスのライヴ盤は及第点。

選曲はムーディーでクールなスタンダード曲が中心。静かな曲が多いので、オールド・スタイルの「難点」が目立つかな、と不安になるが、冒頭の「All the Things You Are」を聴いて安心する。ビブラートは相変わらずだが「難点」がほどんど目立たない。選曲が良く、スインギーなホーキンスのブロウが際立っている。いわゆる、従来よりジャズが持つ「横揺れの魅力」がこのライブ盤に溢れている。

バックのリズム・セクションも優秀。特に、トミー・フラナガンのピアノが良い。ホーキンスのオールド・スタイルのブロウを効果的に支え、ホーキンスがお休みの時は、ホーキンスのソロの雰囲気を壊さない様に、小粋でスインギーなアドリブ・ソロを披露する。「テナー・サックスの父」とも呼ばれるコールマン・ホーキンス。そのオールド・スタイルのブロウを気持ち良く体験できる、また、ジャズ者初心者の方々が、オールド・スタイルのテナーを体験するにも適した「好ライブ盤」です。
 
 
 

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