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2020年4月21日 (火曜日)

スインギーなテナーのズート

サックスの好盤・名演の聴き直しをしているのだが、そんな好盤・名演の類にも「人気に恵まれなかった」サックス奏者が存在する。本当の原因は何故かは判らない。しかし、こうやって、好盤・名演の聴き直しをしていて、その内容は歴史に残るくらいに素晴らしいのに、どうして人気が出なかったのか、理由が良く判らないものが多い。

Zoot Sims『Down Home』(写真左)。1960年6月7日の録音。ベツレヘム・レコードからのリリースになる。ちなみにパーソネルは、Zoot Sims (ts), Dave McKenna (p), George Tucker (b), Dannie Richmond (ds)。バックのリズム/セクションも渋いメンバーで固めた、ズートのテナー・サックス1管のカルテット盤。

ズートのテナー・サックスは温和で適度な力感があって、テクニック優秀なもの。アドリブ・フレーズは音の芯が太く流麗。他に無い、音の柔らかさと芯の強い吹きっぷり。安定安心の個性的なテナー・サックスで、とにかく聴き心地が良い。僕はジャズ者初心者の頃、この盤に出会い、それ以来、40年来の愛聴盤である。

選曲がまた渋くて、冒頭の「Jive at Five」をはじめとして、古い時代の「スタンダード曲」が多く取り上げられている。1960年という時代の中で、この盤の演奏のトレンドは「ハードバップど真ん中」。モード・ジャズやファンキー・ジャズには目もくれていないところに、ズートのジャズマンとしての矜持を感じる。
 
 
Down-home-zoot-sims  
 
 
演奏それぞれに「ノリが良い」。とてもスインギーなのだ。バックのリズム・セクションの役割が大きく、ダニー・リッチモンドが叩き出すスインギーなリズム&ビートを基に、ジョージ・タッカーのウォーキング・ベースが躍動感を醸し出し、マッケンナのピアノが推進力を増幅する。このリズム・セクション、かなり強力なのだ。

そんなリズム・セクションに乗って、ズートは気持ちよさそうに、スインギーなフレーズを連発する。そう、この盤のズートのテナー・サックスは、爽快でスインギーなのだ。ズートのテナー・サックスには「癖」というものが無いので、ややもすれば、単調に聴こえてしまうきらいがあるが、この盤には、そんな懸念は全く無い。

これだけ素敵なテナーを吹きこなせるズート。もっともっと優秀盤の名前が挙がってきても良いと思うのだが、両手に余る数なのが意外。メジャーなレーベルにあまり恵まれず、そして、癖の無い流麗な聴き易いテナーが故、特に我が国では、硬派なジャズ者の方々に敬遠されたことが原因かなあ。

とにかく、ズートは「人気に恵まれなかった」サックス奏者というイメージがあるのが残念。でも、この『Down Home』は良いですよ。ジャズ者初心者からベテランまで、ジャズ者万人にお勧めです。
 
 
 
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