計算された「考えたジャズ」
「真夏の夜のジャズ」という映画があった。1958年のニューポート・ジャズ・フェスティバルののライブ映像を収録したドキュメンタリー作品であるが、この映画を僕は、まだジャズをよく知らなかった高校時代に見ている。良く知らなかった訳だが、この映画の中で繰り広げられる演奏は、スリリングで理知的で創造的な類の音楽であることは直ぐに判った。思わず、聴き耳を立てたのを、ついこの間の事の様に覚えている。
『The Jimmy Giuffre 3』(写真左)。1956年12月4日、ロサンザルスでの録音。ちなみにパーソネルは、Jimmy Giuffre (cl, ts, bs), Ralph Peña (b), Jim Hall (g)。クラリネット、テナーサックス、バリトンサックスの3つのリード楽器を吹きこなす、リーダーのジミー・ジュフリーと、夭折のベーシストであったラルフ・ペーニャ、そして、伝統的でありながらプログレなギタリスト、ジム・ホール。この3人のトリオ編成。
このトリオ演奏はユニーク。まず、ドラムがいない。リズム&ビートは、ベースとギターが分担。ドラムがいないが躍動感はしっかりキープされている「クールなリズム隊」。そして、演奏を聴けば判るが、当時流行のハードバップな演奏とは似ても似つかない、というか、正反対の雰囲気の「クール」で、計算されアレンジされた即興演奏。この盤に聴かれるジャズは、閃きを基にした即興演奏では無い。明らかに、計算され尽くした「考えたジャズ」である。
即興演奏を旨としたジャズである。即興演奏というものには、その時その時の「閃きを基にした」アドリブもあるが、事前に考え、アレンジされ、意思統一されたルールの中で展開されるアドリブもある。鑑賞音楽としてのジャズについては、後者の「考えたアドリブ」もアリである。「実験ジャズ」と揶揄されることもあるが、これも立派なジャズ、これも立派なアドリブである。
どこかホンワカ、ノンビリと牧歌的でフォーキーな雰囲気が漂うが、しっかりとスイングしている。これは、ベースのペーニャ、ギターのホールの「クールなリズム隊」に担うところ大である。ベースとギターのリズム&ビートは、ドラムに比べると音量的に地味なのだが、スイング感は半端ない。リズム・チェンジや緩急の付け方など、柔軟かつ迅速。クールでフォーキーなジュフリーのリード楽器にピッタリと寄り添うが如く、である。
先に語ったドキュメンタリー映画「真夏の夜のジャズ」のオープニングが、ジミー・ジェフリー・トリオのインプロヴィゼーションだった(この時のパーソネルは、Jimmy Giuffre (cl, ts, bs), Bob Brookmeyer (tb), Jim Hall (g) )、のっけから格好良いジャズの登場に耳は釘付け。考えたジャズ、考えた即興演奏は、実にクールで格好良かった。この『The Jimmy Giuffre 3』でも、そんな格好良い、考えた即興演奏を聴くことが出来る。これもジャズである。
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