テオ・ヒルという中堅ピアニスト
ジャズの新盤のチェックは楽しい。新盤の情報については、ジャズ雑誌の新盤コーナーの記事、そして、サブスク音楽サイトの「New Music」の情報欄から入手する。昨日の様に、レジェンド級のベテランの新盤もあれば、若手有望株の新盤もある。コンスタントに内容のある盤をリリースし続ける中堅の新盤もある。ジャズ雑誌やサブスク音楽サイトの新盤情報は、事前に内容の良し悪しをチェックしてくれているので、基本的に間違いが無いのが嬉しい。
Theo Hill『Reality Check』(写真左)。2020年1月、Posi-Tone レーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、Theo Hill (p), Joel Ross (vib), Rashaan Carter (b), Mark Whitfield Jr. (ds)。2014年にSmalls Liveからデビュー作をリリースしたNYのピアニスト、テオ・ヒルの最新作。テオ・ヒルは、1982年生まれで今年38歳。中堅に差し掛かった、先行き有望なジャズ・ピアニストの一人。
この新盤では、ブルーノートから昨年、鮮烈デビューしたシカゴ生まれ、現在はNYブルックリンをベースに活動している若き天才ヴァイブ奏者ジョエル・ロスをフィーチャーしたカルテット編成となっている。ピアノとヴァイブのソロの取り分は同じくらい。ヴァイブをフィーチャーというよりは、ヴァイブを入れて、ピアノ・トリオの演奏にアクセントを付け、ユニークな色づけがなされているように思う。
選曲については、先行き有望なジャズマンらしく、自身のオリジナルが全10曲中7曲を占める。ヒルのオリジナル曲はフレーズも聴きやすく印象的。独りよがりなところは全く無い。残りの3曲は、デビッド・バークマン、マルグリュー・ミラー、スティービー・ワンダーのナンバーを収録。この残りの3曲の選曲もユニーク。新進気鋭なヒルの心意気を感じる。
オリジナル曲については、自前の曲ゆえ、当然のことながら、モーダルな演奏トレンドを基本に、自由度の高い、極上の「ネオ・ハードバップ」な演奏を展開、ヒルのピアノをメインとしたピアノ・トリオの演奏能力の高さを見せつけてくれる。ヒルのピアノはクリアで明確で硬質なタッチで耽美的で流麗なフレーズが個性。ファンクネスは殆ど感じ無い。NY生まれながら、ピアノのタッチと雰囲気は「欧州ジャズ」に近い。
このヒルのピアノが、同じくクリアで明確で硬質な音質のロスのヴァイブと相性バッチリで、ユニゾン&ハーモニーなどは、ピアノとヴァイブ、瓜二つの双子の様な響きで、濁りが全く無くて爽快。ヒルのピアノトリオに対して、ロスのヴァイブが違和感無く、溶け込んでいる。現代の「ネオ・ハードバップ」な演奏として、内容の濃い新盤である。この「Theo Hill(テオ・ヒル)」という中堅ピアニストの名前は覚えておいた方が良い。
《バーチャル音楽喫茶『松和』別館》
【更新しました】2020.03.29
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【更新しました】2020.04.01
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