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2020年4月28日 (火曜日)

こんなアルバムあったんや・127

ジャズには「幻の名盤」というものがある。アルバムの内容が優れているにも関わらず、リリースした時の発売枚数があまりに少なくて、ジャズ者リスナーがその盤を求めようとした時に流通在庫が無い、若しくは、あっても、プレミアム価格がついて手が出ないほど高額になっているアルバムのことなんだが、CDの時代になって、突如復刻リイシューされることが頻繁にあって、「幻の名盤」も以前よりは数が少なくなった。

『This Is Pat Moran』(写真左)。1957年12月、シカゴでの録音。ちなみにパーソネルは、Pat Moran (p), Scott LaFaro (b), Gene Gammage (ds)。リーダーのパット・モランは、当時まだ珍しい女性ジャズ・ピアニストである。もともとクラシックのコンサート・ピアニストだったそうだが、ジャズに出会って、一念発起、ジャズ・ピアニストに転向した変わり種。

この盤、ジャケットがなかなかで、かのソニー・クラークのブルーノート盤『クール・ストラッティン』に継ぐ、女性美脚ジャケットとして有名。ただ、この『This Is Pat Moran』の女性美脚はカラー写真で、しかもハイヒールが真っ赤で、ちょっと趣味が悪い。『クール・ストラッティン』は白黒でかつシュッとした出で立ちの女性美脚で、それはそれはクールなジャケット。これと「並ぶ」美脚ジャケットと言うには、ちょっとねえ ・・・・。
 
 
This-is-pat-moran   
 
 
おっと、この盤の話題は美脚ジャケットでは無かった。パーソネルを見れば判るんだが、ビル・エヴァンスのトリオへの参加で有名となる前のスコット・ラファロがベースを担当している。これがこの盤の目玉の1つで、ラファロの高テクニックな、流麗で骨太なベース・ライン、グイグイ迫るランニング・ベース、そして、自由度の高いアドリブ・フレーズが、この盤で、既に完成されていることが判る。このラファロのベースが、アルバム全編に渡って「聴きどころ」のひとつになる。

そして、当然、リーダーの女性ピアニスト、パット・モランのピアノがもう一つの「聴きどころ」になる。彼女のピアノは、一聴だけでは女性ピアニストとは思えない、明確なタッチでダイナミックな弾き回しが個性。しかし、ダイナミックな勢いだけで押すピアノでは無く、アドリブ展開のそこかしこに繊細な節回しも聴くことが出来て、なかなか小粋なピアノではある。ただ、ちょっとだけ、明確な個性に欠けるところは「ご愛嬌」。

ラファロのベースも圧巻ではあるが、リーダーを圧倒せず、しっかりピアノ・トリオの中のベースの役割をしっかり果たしていて、モランのピアノが「明確なタッチでダイナミックな弾き回し」であるが故、ラファロのグイグイ迫るランニング・ベースに、ほぼ負けることなく、バランスの取れたピアノ・トリオとなっている。ピアノ・トリオ盤として、まずまず優れた内容で、決して平凡な内容の盤では無い。
 
 
 

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