ジャズ・ヴァイオリンの可能性
気がつけば、今月はジャズ・ヴァイオリンの新盤、しかも日本人女性のジャズ・ヴァイオリンの新盤が2枚も出ている(寺井尚子の新盤については昨日ご紹介済み)。もともと、ヴァイオリンって、ジャズにおいてはマイナーな楽器で、世界的に見ても、リーダー作をリリースしているメジャーなジャズ・ヴァイオリニストは数人しかいない。歴史的に振り返って見ても、メジャーどころでは4〜5名止まりだと思う。
Junko Makiyama New Project『Brisa de Alegria』(写真左)。日本語で表記すると、牧山純子ニュープロジェクト『アレグリア』。2020年4月のリリース。L.A.での録音。ちなみにパーソネルは、牧山純子 (vln), 安部潤 (key), Kay-Ta Matsuno (g), 須藤満 (b), Tony Moore (ds), Fraga Felipe (perc)。4曲目に Eric Marienthal (sax) が、6曲目に Ilya Serov (tp)。 この盤では、牧山はエレクトリック・バイオリンも手にしている。ということは、と、この盤の内容に思わず期待が高まる。
リーダーでジャズ・ヴァイオリニストの牧山純子。1974年12月。武蔵野音楽大学卒業後フランスで研鑽を積み、国内でソリストとして活動するが、2002年、バークリー音楽大学に入学しジャズヴァイオリンを専攻。2007年11月、インディーズレーベルより『ポートレイト・オブ・ニューヨーク』を発売。以降、クラシックとジャズの二足の草鞋を両立させている、ユニークなヴァイオリニストである。
選曲が面白い。3曲目の「Hotel California」、5曲目に「Desperado」、これって、米国西海岸ロックの雄、イーグルスの名曲だよね。そして、その曲名を見て、思わず仰け反ったのが、9曲目の「20th Century Boy」。これって、70年代グラムの伝説、T.Rexの名曲。ジャズ・ヴァイオリンで70年代のロック名曲のカヴァーをやるか、と思うんだが、これがなかなか。アレンジ良好、ヴァイオリンの弾きっぷりも「ビ・バップ」ぽくて良好。他に、クラブサウンドやサンバにも手を伸ばしているところが意欲的。
バックのバンドも極上のフュージョン・サウンドで牧山のヴァイオリンを盛り立てている。ヴァイオリンがメインのジャズとなると、流麗でメロディアス、もしくはムーディーなアレンジ〜演奏に流れ易いが、この盤では、それを意図的に避けている様に感じる。この盤のフュージョン・ジャズ志向の「ジャズ・ヴィオリン」は、今までのジャズ・ヴァイオリンの演奏の既成概念を覆しつつ、表現の可能性がまだまだ残されていることを示している。
アルバム・タイトルにある、ポルトガル語で「喜び」の意味の「Alegria(アレグリア)」。収録されたどの曲にも、躍動的でポジティヴなアレンジが施されている。疾走感、爽快感溢れる「Moon Shadow」、ノリノリのラストの表題曲「Brisa de Alegria」など、ヴァイオリンの躍動感を前面に押し出して、実に楽しい「フュージョン・ジャズ」なアルバムに仕上がっている。
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