« 計算された「考えたジャズ」 | トップページ | ジャズ・ヴァイオリンの可能性 »

2020年4月26日 (日曜日)

寺井尚子の新盤『Flourish』

日本のジャズ・バイオリンの名手、寺井尚子が新しいアルバムを出した。寺井尚子といえば、1998年に初リーダー作『Thinking Of You』をリリース。それまでのジャズ・バイオリンはスインギーで隙間の無い流麗なフレーズが特徴であったが、寺井のジャズ・バイオリンは「ビ・バップ」の奏法をバイオリンに置き換えたもので、その新鮮な響きに驚いた。

そんな「ビ・バップ」な奏法をベースに好盤を連発。メインストリーム・ジャズ系のジャズ・バイオリンとして、僕も初リーダー作以来、ずっと新しいリーダー作が出る度に追いかけたものだ。が、初のベスト盤『Naoko Terai Best』のリリース以降、アルバムの内容は旧来の「スインギーで隙間の無い流麗なフレーズ」がメインの奏法を前面に押し出した、イージーリスニング・ジャズ志向のアルバムが主流になった。

それ以来、メインストリーム・ジャズ志向の演奏が少なくなるにつれ、まあ、ジャズ・バイオリンのトレンドを追いかける意味で、何枚かのリーダー作は聴いてはいるが、寺井尚子のアルバムからは徐々に遠のいていった。が、今回の新盤は、『セ・ラ・ヴィ』(2013年)以来、7年ぶりのカルテット編成での録音、という。それでは、ということで、今回は気合いを入れて聴いた。
 
 
Flourish
 
 
寺井尚子『Flourish(フローリッシュ)』(写真左)。2020年1月27日、28日の録音。ちなみにパーソネルは、寺井尚子 (vln), 北島直樹 (p), 古野光昭 (b), 荒山諒 (ds)。寺井尚子のバイオリン1本をフロントに据えたカルテット構成。イメージ的にはワンホーン・カルテットと同じと考えて良い。寺井尚子のバイオリンの個性が一番判り易い演奏フォーマットである。

ただし、選曲を見ると、まだまだイージーリスニング・ジャズ志向の選曲傾向にあるので、実はあんまり期待せずに聴いたのだが、いわゆるモダン・ジャズの基本的な演奏フォーマットである「カルテット」構成での演奏というだけで、メインストリーム・ジャズ志向の雰囲気が濃厚になるのだから面白い。

カルテット構成の演奏で、旧来の「スインギーで隙間の無い流麗なフレーズ」がメインの奏法を前面に押し出すと、アドリブ展開が間延びする。それを避けようとすると、いきおい「メインストリーム・ジャズ志向のビ・バップ」な奏法を活用せざるを得ない。そんなところかと感じた。イージーリスニング志向の甘いフレーズの曲についても、フレーズにしっかりと芯が入った演奏になっていて、意外と硬派な内容になっている。

それでも、この盤はまだ全面的に「ビ・バップ」な奏法に回帰した訳では無い。硬派なメインストリーム志向の「イージーリスニング・ジャズ」的アルバムであると思う。ただ、イージーリスニング臭さと甘さがかなり緩和されていて、「ながら聴き」には最適な内容かな、と思いつつ聴き耳を立てている。
 
 
 

《バーチャル音楽喫茶『松和』別館》の更新状況
 

 ★ AORの風に吹かれて     【更新しました】2020.04.18更新。

  ・『Down Two Then Left』 1977
  ・『Silk Degrees』 1976

 ★ まだまだロックキッズ     【更新しました】 2020.04.19更新。

  ・レッド・ツェッペリン Ⅰ

 ★ 松和の「青春のかけら達」 【更新しました】 2020.04.22更新。

  ・チューリップ 『TULIP BEST』
  ・チューリップ『Take Off -離陸-』
 
 
Matsuwa_billboard  

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

東日本大震災から9年1ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
 
Never_giveup_4
 

« 計算された「考えたジャズ」 | トップページ | ジャズ・ヴァイオリンの可能性 »

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

« 計算された「考えたジャズ」 | トップページ | ジャズ・ヴァイオリンの可能性 »

リンク

  • まだまだロックキッズ(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    この「松和・別館」では、懐かしの「1970年代のロック」盤の感想や思い出を率直に語ります。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、70年代ロックの記事を修正加筆して集約していきます。
  • 松和の「青春のかけら達」(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    この「松和・別館」では、懐かしの「1970年代のJポップ」、いわゆるニューミュージック・フォーク盤の感想や思い出を率直に語ります。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、70年代Jポップの記事を修正加筆して集約していきます。           
  • AORの風に吹かれて(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    AORとは、Adult-Oriented Rockの略語。一言でいうと「大人向けのロック」。ロックがポップスやジャズ、ファンクなどさまざまな音楽と融合し、大人の鑑賞にも堪えうるクオリティの高いロックがAOR。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、AORの記事を修正加筆して集約していきます。  

カテゴリー