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2020年4月22日 (水曜日)

安心・安定の熟成されたテナー

ブルーノート・レーベルには、ほとほと感心する。よく、こんなジャズマンのパフォーマンスを記録していたもんだ、と思う盤がごまんとある。リーダー盤として記録されたジャズマンのほとんどが一流ジャズ・ミュージシャンに成長している。レーベルのカタログに載る盤のリーダーを任せるのである。外れたら目も当てられないのだが、ブルーノートには外れが無い。総帥のプロデューサー、アルフレッド・ライオンの慧眼の成せる技なんだろう。ほとほと感心する。

Clifford Jordan『Cliff Craft』(写真左)。1957年11月10日の録音。ブルーノートの1582番。ちなみにパーソネルは、Clifford Jordan (ts), Art Farmer (tp), Sonny Clark (p), George Tucker (b), Louis Hayes (ds)。

リーダーのテナー・サックス奏者、クリフォード・ジョーダンとトランペット担当のアート・ファーマーとの2管フロントのクインテット構成。バックのリズム・セクションは、哀愁のバップピアニスト、ソニー・クラークをメインに、職人肌のタッカーのベースとヘインズのドラムで「鉄壁のリズム隊」。

リーダーのクリフォード・ジョーダンは、1931年生まれ。惜しくも1993年3月に鬼籍に入っている(享年61歳)。この盤を録音した時、ジョーダンは26歳。少し歳はいっているが、まだまだ若手のジャズマンである。そんなジョーダンに、ブルーノートはリーダー作としての録音の機会を与えているのだ。しかも、共演ミュージシャンについても、申し分の無い、渋い玄人好みの人選で録音に臨んでいる。
 
 
Cliff-craft-cliff-jordan  
 
 
そして、その内容は「絵に描いた様なハードバップ」であり「典型的なブルーノートの音」。録音年は1957年、確かにハードバップ時代ど真ん中なんだが、それにしても、ハードバップの特徴・個性、そして「美味しいところ」がこの盤にギッシリと詰まっているのだ。テーマ部のユニゾン&ハーモニー、アドリブへの展開、アドリブの受け渡し、アドリブの節回し、どれをとっても「ハードバップ」である。

ジョーダンのテナーは「端正」「整然」「穏健」。テナーの音に乱れが無い。しっかり吹き切っている。そして、旋律の音の一つ一つを丁寧に紡ぎ上げる。例えば、ダブルタイムを殆ど吹かないし、婉曲的な節回しは無い。そして、そのブロウはしっかりと抑制されている。人の耳に聴き心地の良い音の大きさ、滑らかさでテナーを吹く。激情に任せた激しいブロウは皆無。26歳のプレイとは思えない、安心・安定の「熟成されたテナー」である。

バックのソニー・クラークのピアノも好調。良く鳴るフレーズをそこはかとないファンクネスを偲ばせて、ジョーダンのテナーにピッタリと寄り添っている。タッカーのベースとヘインズのドラムのリズム隊も、堅実に躍動的に、バンド・サウンド全体に対して、爽快なリズム&ビートを供給する。

クリフ・ジョーダンは地味な存在ではあるが、彼のリーダー作でのテナー・サックスのプレイは「端正」「整然」「穏健」。典型的なハードバップな演奏の中で、安心・安定の「熟成されたテナー」を聴かせてくれる。ジャズ者初心者の方々にもお勧めの「飽きの来ない好盤」です。
 
 
 
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