安心・安定の熟成されたテナー
ブルーノート・レーベルには、ほとほと感心する。よく、こんなジャズマンのパフォーマンスを記録していたもんだ、と思う盤がごまんとある。リーダー盤として記録されたジャズマンのほとんどが一流ジャズ・ミュージシャンに成長している。レーベルのカタログに載る盤のリーダーを任せるのである。外れたら目も当てられないのだが、ブルーノートには外れが無い。総帥のプロデューサー、アルフレッド・ライオンの慧眼の成せる技なんだろう。ほとほと感心する。
Clifford Jordan『Cliff Craft』(写真左)。1957年11月10日の録音。ブルーノートの1582番。ちなみにパーソネルは、Clifford Jordan (ts), Art Farmer (tp), Sonny Clark (p), George Tucker (b), Louis Hayes (ds)。
リーダーのテナー・サックス奏者、クリフォード・ジョーダンとトランペット担当のアート・ファーマーとの2管フロントのクインテット構成。バックのリズム・セクションは、哀愁のバップピアニスト、ソニー・クラークをメインに、職人肌のタッカーのベースとヘインズのドラムで「鉄壁のリズム隊」。
リーダーのクリフォード・ジョーダンは、1931年生まれ。惜しくも1993年3月に鬼籍に入っている(享年61歳)。この盤を録音した時、ジョーダンは26歳。少し歳はいっているが、まだまだ若手のジャズマンである。そんなジョーダンに、ブルーノートはリーダー作としての録音の機会を与えているのだ。しかも、共演ミュージシャンについても、申し分の無い、渋い玄人好みの人選で録音に臨んでいる。
そして、その内容は「絵に描いた様なハードバップ」であり「典型的なブルーノートの音」。録音年は1957年、確かにハードバップ時代ど真ん中なんだが、それにしても、ハードバップの特徴・個性、そして「美味しいところ」がこの盤にギッシリと詰まっているのだ。テーマ部のユニゾン&ハーモニー、アドリブへの展開、アドリブの受け渡し、アドリブの節回し、どれをとっても「ハードバップ」である。
ジョーダンのテナーは「端正」「整然」「穏健」。テナーの音に乱れが無い。しっかり吹き切っている。そして、旋律の音の一つ一つを丁寧に紡ぎ上げる。例えば、ダブルタイムを殆ど吹かないし、婉曲的な節回しは無い。そして、そのブロウはしっかりと抑制されている。人の耳に聴き心地の良い音の大きさ、滑らかさでテナーを吹く。激情に任せた激しいブロウは皆無。26歳のプレイとは思えない、安心・安定の「熟成されたテナー」である。
バックのソニー・クラークのピアノも好調。良く鳴るフレーズをそこはかとないファンクネスを偲ばせて、ジョーダンのテナーにピッタリと寄り添っている。タッカーのベースとヘインズのドラムのリズム隊も、堅実に躍動的に、バンド・サウンド全体に対して、爽快なリズム&ビートを供給する。
クリフ・ジョーダンは地味な存在ではあるが、彼のリーダー作でのテナー・サックスのプレイは「端正」「整然」「穏健」。典型的なハードバップな演奏の中で、安心・安定の「熟成されたテナー」を聴かせてくれる。ジャズ者初心者の方々にもお勧めの「飽きの来ない好盤」です。
《バーチャル音楽喫茶『松和』別館》の更新状況
★ AORの風に吹かれて 【更新しました】2020.04.18更新。
・『Down Two Then Left』 1977
・『Silk Degrees』 1976
★ まだまだロックキッズ 【更新しました】 2020.04.19更新。
★ 松和の「青春のかけら達」 【更新しました】 2020.04.22更新。
・チューリップ 『TULIP BEST』
・チューリップ『Take Off -離陸-』
★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。
東日本大震災から9年1ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
« スインギーなテナーのズート | トップページ | 松和の『青春のかけら達』を新設 »
コメント