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2020年3月23日 (月曜日)

「テナー奏者」としてのゴルソン

ベニー・ゴルソン(Benny Golson)について、先週から語っているのだが、どうも、ゴルソンのアレンジの十八番である「ゴルソン・ハーモニー」に偏りすぎたきらいがある。ゴルソンはジャズ・テナーサックス奏者。それでは、テナーサックス奏者としての実力のほどはどうなのか。

ゴルソンのテナーサックス奏者としての評価については、辛口の評価が多い。モワッとしている、つかみ所がない、暑苦しい、切れ味が無い、などと評価は芳しく無い。ケチョンケチョンである。しかし、である。ゴルソンは1929年生まれなので、今年で91歳。未だ現役。1953年以降、ずっと第一線の立ち位置をキープしているのは何故か。まさか「アレンジの才能」だけで、第一線をキープできるほど、ジャズの世界は甘くない。そんなゴルソンのテナーサックス奏者としての力量を、きっちりと推し量ることが出来る好盤がある。

Benny Golson『Take a Number from 1 to 10』。1960年12月、1961年4月の録音。無伴奏ソロ、デュオ、トリオ、カルテット、クインテット、セクステット、セプテット、オクテット、ノネットと演奏メンバーが増えて、最後は10編成テンテットで終わる、という企画盤。

ちなみにパーソネルは、Benny Golson (ts), Art Farmer (tp, track10), Bernie Glow (tp, tracks 9&10), Freddie Hubbard (tp, tracks 5–7), Nick Travis (tp, tracks 8–10), Willie Ruff (French horn, tracks 8–10), Bill Elton (tb, tracks 8–10), Curtis Fuller (tb, tracks 6 & 7), Hal McKusick (as, tracks 8–10), Sol Schlinger (bs, tracks 8–10), Sahib Shihab (bs, track 7), Cedar Walton (p, tracks 4–7), Tommy Williams (b, tracks 2–10), Albert Heath (ds, tracks 3–10)
 

Take-a-number-from-1to10

 
冒頭、ソロは「You're My Thrill」で始まる。ゴルソンのテナーのソロ。堂々たる吹きっぷり。豊かな表現力。2曲目の「My Heart Belongs To Daddy」はベースとのデュオ。フロントの旋律はテナーが牽引する。力強くクールなテナーの響き。3曲目「The Best Thing For You Is Me」はピアノレス・トリオ。バックのリズム&ビートに乗って、ゴルソンがテクニックよろしく、自由に奔放に吹きまくる。

このソロ、デュオ、トリオの演奏で、ゴルソンのテナーサックス奏者としての優れた力量がよく判る。テクニックも良好、大らかに力強くテナーサックスを吹き上げる。やはり60年以上も第一線の立ち位置をキープしているテナー奏者である。ジャズ・テナー奏者のレジェンドに名を連ねることが出来るくらいに、ゴルソンのテナーは優秀。ちなみに、4曲目のカルテット演奏以降の編成は、従来のゴルソンの「アレンジの才」を愛でることが出来るもの。

ゴルソンのテナーについての「芳しく無い評価」の原因については、まずは本人について好不調の波が意外とある、ということ。これは仕方ない。そしてもう一つの原因については、演奏の録音状態に因るものが大きいのでは、と思っている。

全体として録音状態の良い盤ではゴルソンのテナーは活き活きとしていて、大らかで力強い。録音状態の悪い盤では、ゴルソンのテナーは、音が籠もった様にモワッとして、切れ味悪く暑苦しい。ゴルソンのテナーの音質が録音状態に左右されやすいのだろう。本人の状態が好調で、盤自体の録音状態が良い盤では、ゴルソンのテナーは無敵である。
  
 
 

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