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2020年3月 1日 (日曜日)

米国西海岸の「室内楽ジャズ」

米国西海岸ジャズは洒落たアレンジが特徴。かなり高度なスキルに裏付けられたアレンジで、テーマ部のアンサンブルのユニゾン&ハーモニーなどは、クールで計算されたアレンジで、明らかに「聴かれる、聴かせる」ことを意識したジャズであることが判る。音楽であるからして、まずは聴き手に気持ち良く聴いて貰うのが筋、という雰囲気が伝わってくる。これが米国西海岸ジャズの特徴。

『Chico Hamilton Quintet and Buddy Collette』(写真左)。1955年8月の録音。ちなみにパーソネルは、Chico Hamilton (ds), Buddy Collette (ts, as, fl, cl), Fred Katz (cello), Jim Hall (g), Carson Smith (b)。不思議な編成である。当時、当たり前の様に入っていたピアノが無い、代わりにといってはなんだが、チェロが入っていて、ギターが入っているクインテット構成。どんな音がするんだ、と思ってしまう。

聴いてみて良く判るんだが、この盤、米国西海岸ジャズの特徴である「アレンジの妙」を最大限に発揮している内容なのだ。このチコ・ハミルトンのクインテットは「室内楽ジャズ」と呼ばれる。従来のジャズ編成とは異なる「弦楽器が3つ」あって、その「弦楽器が3つ」を前提にしたアレンジを施したジャズがこの盤の「ミソ」。演奏の響き自体が、明らかにクラシックの室内楽的な響きで埋め尽くされている。
 
 
Chico-hamilton-quintet-featuring-buddy-c
 
 
異色のジャズと言ってよいだろう。フレッド・カッツのチェロ、ジム・ホールのギターと共に、フロントの旋律を構成しているが、バディ・コレットのリード楽器&フルート。とりわけ、フルートやクラリネットを駆使した旋律のユニゾン&ハーモニーは実にユニーク。演奏については、しっかりとアレンジされ、譜面を重視したアンサンブルが見事です。演奏テクニックも高度なものがあり、クラシックの如く「室内楽ジャズ」と呼ばれるのが良く判ります。

それではクラシックの様で、ジャジーな雰囲気は薄いのではないか、と思うのですが、これが以外とジャジーな雰囲気は維持されているから面白い。アレンジの中で、いわゆる「ブルーノート」の音階をしっかり押さえていて、「室内楽ジャズ」的なアレンジを施していても、ユニゾン&ハーモニーの底にジャジーな雰囲気が流れている。加えて、アドリブ展開では、きっちりジャズの演奏に戻っているのが「ニクい」。

ジャケット・デザインも、メンバーそれぞれが楽器を持ってポーズをとった姿が、バランス良くあしらわれたもので、当時としてはデザイン性の高いジャケットである。「室内楽ジャズ」と呼ばれ、優れたアレンジを施した内容は、優れたジャケット・デザインと併せて、ジャズをアーティステックな音楽として鑑賞する「ハイソサエティな聴衆」向けであることが想像出来る。いわゆる「聴かれる、聴かせる」ことを意識したジャズの好例がこの盤である、と言える。
  
 
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