聴けば聴くほど味わいが深まる
「ゴルソン・ハーモニー」をネットで紐解くと、「対位法に似た、シンプルな編成にも関わらず、実は複雑なホーンの絡み」、「ハードバップの硬質な響きの中にスウィングの柔らかいハーモニーを活かすアレンジ」、「ユニゾンを基調にしたシンプルで美しいアンサンブル」などという形容が見られるが、これという決定打は無い。そもそも「ゴルソン・ハーモニー」、これくらいしか具体的に文字にしたものは見当たらない。
数学の計算式の様に、理屈・理論をもって確立したアレンジ手法ではないので、まずは聴いて体感して、文字による表現を読んだ方が判り易い。基本は「ユニゾン&ハーモニー」が特徴的なのだが、フロント楽器の編成によって、ユニゾン部とハーモニー部を上手く組み合わせて、柔らかで耳に心地良い響きを実現、しかし、複雑さは無く、シンプルで通りの良い響きが基本なので、小編成の楽器数でも、ゴルソン・ハーモニーは成立する。
Benny Golson『Groovin' With Golson』(写真左)。1959年8月の録音。ちなみにパーソネルは、Benny Golson (ts), Curtis Fuller (tb), Ray Bryant (p), Paul Chambers (b), Art Blakey (ds)。フロントはゴルソンのテナー・サックスとフラーのトロンボーンの2管。「ジャズテット」の3管フロントの2管がここに配されている。バックのリズム・セクションは、レイ・ブライアントのピアノをベースとした、P.C.のベース、ブレイキーのドラム。いかにも玄人好みのリズム・セクションである。
この盤は、ゴルソンのテナー、フラーのトロンボーンの2管フロントの快作。ゴルソン・ハーモニーというアレンジが威力を発揮した一枚である。テナーのトロンボーンの2管だけで、よくここまで、ふくよかで、ブルージーで、グルーヴ感溢れるユニゾン&ハーモニーが表現できるなあ、と感心することしきり、である。テナーとトロンボーンの音の特性をよく理解して、ユニゾン部とハーモニー部を編成している。
いかにもファンキー・ジャズらしい、ハードバップらしい響き。加えて、この盤では、ゴルソン・ハーモニーの心地良さと、ハードバップらしいアグレッシブなプレイが共存しているところが、聴いていて楽しい。恐らく、ドラム担当のアート・ブレイキーの貢献度が大きいのだろう。ブレイキー独特のグイグイと牽引し鼓舞するドラミングが、この盤では良い方向に作用している。
ファンキーで小粋なブライアントのピアノも演奏全体に対する貢献度大で、伴奏に回れば、小粋で洒落たバッキングを奏で、ソロに出れば、ファンキーで小粋なフレーズを連発する。チェンバースのベースは演奏全体の「底」をしっかりと支えている。この盤、聴けば聴くほど味わいが深まる。ゴルソン・ハーモニーとハードバップらしいアグレッシブな演奏が醸し出す、スインギーなグルーヴ感が濃厚に出た、ファンキー・ジャズの好盤である。
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