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2020年3月11日 (水曜日)

西海岸の「ハードバップ」な盤

ジャズについては、今でも「そう言えばそうやったな〜」と再認識することに出くわすことがある。例えば、ベツレヘム・レコードであるが、僕がジャズを聴き始めた40年ほど前、米国東海岸ジャズのハードバップ系のアルバムばかりが紹介されていたので、僕はてっきり、ベツレヘムは米国東海岸ジャズのご用達レーベルのひとつだと思っていた。が、ベツレヘムは、米国西海岸ジャズの優れたアルバムを結構残しているのだ。米国西海岸ジャズを語る上で、このベツレヘム・レコードの存在は避けて通れない。

Stan Levey『This Time The Drum's On Me』(写真左)。1955年9月27-28日の録音。ちなみにパーソネルは、Stan Levey (ds), Leroy Vinnegar (b), Lou Levy (p), Dexter Gordon (ts), Frank Rosolino (tb), Conte Condoli (tp)。フロント3管(テナーサックス・トロンボーン・トランペット)のセクステット(六重奏)編成。ドラマーのスタン・リーヴィーがリーダーのアルバムである。

リーダーのスタン・リーヴィー(Stan Levey)は、1926年、フィラデルフィア生まれ。2005年4月に79歳で逝去している。若かりし頃は「ビ・バップ」な白人ドラマー。ディジー・ガレスピーやチャーリー・パーカーとの共演歴があり、その後、スタン・ケントン楽団に在籍した。1954年に米国西海岸に渡り、西海岸のジャズに大きな影響を与えた。リーヴィーのプレイの基本は「ビ・バップ」。米国西海岸ジャズは、ビ・バップのリズム&ビートの雰囲気をリーヴィーのドラミングの中に見い出し吸収した、と言えるのではないか、と想像している。
 
 
This-time-the-drums-on-me
 
 
ドラマーがリーダーの盤なので、前奏部でのドラムでのイントロや、アドリブ部でのドラムソロが散りばめられているが、極端に目立つことは無い。テクニックも優秀、スイング感も豊かであるが、ファンクネスは希薄。洒落てて粋な乾いたドラミングは、やはり「米国西海岸ジャズ」ならではである。ビ・バップ仕込みのアタック音が明確で切れ味が良い。決して、米国東海岸ジャズのドラマーに引けを取らない、優れたドラミングである。

演奏自体はフロント3管ではあるが、米国西海岸ジャズの特徴であるアレンジは必要最小限に留められている。それにも増して、フロント3管、それぞれのアドリブ展開のパフォーマンスが素晴らしい。この盤、米国西海岸ジャズらしからぬ、楽器演奏の力強さ、メリハリの効いたアドリブ展開が特徴の演奏内容になっている。恐らく、孤高の「バップなテナー・サックス」のデクスター・ゴードンの存在が、この盤の演奏の雰囲気を「米国東海岸ジャズ風な力強い展開のハードバップ」に接近させているのかもしれない。

荷物に埋もれた男のイラストがボツンとあしらわれたジャケット・デザインも粋でお洒落。タイトルも「This Time The Drum's On Me = 今こそドラムを叩く時」と粋でお洒落。アルバムの演奏全体のリズム&ビートをガッチリと掌握し、フロント3管を鼓舞しサポートするスタン・リーヴィーのドラミングは見事の一言。米国西海岸ジャズでありながら、硬派でストイックでハードバップなジャズの好盤です。
 
 
 

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