ジャズ喫茶で流したい・160
昨日、八城一夫さんのリーダー作『Side by Side』をご紹介した。あれは、ピアノの名器「ベーゼンドルファー」と「スタインウェイ」との聴き比べの企画盤。A面をベーゼンドルファー、B面をスタインウェイで収録、名器と呼ばれるピアノの違いによる聴き較べが出来るという趣向。そういう意味では、企画盤では無い、通常のリーダー作を聴いてみたくなる。
八城一夫『Drivin'』(写真)。1973年の作品。ちなみにパーソネルは、八城一夫 (p), 松本英彦 (ts), 原田政長 (b), 五十嵐武要 (ds), 清水潤 (ds)。テナーがフロントのカルテット構成だが、ピアノのソロ演奏あり、ピアノ・トリオ演奏あり、テナーの入ったカルテット演奏あり、でバラエティに富んだ演奏形態それぞれで、八城一夫のピアノが心ゆくまで堪能出来る寸法。
八城一夫のピアノは、明確で硬質なタッチ、端正で素性の良いピアノの音が特徴で、ピュアで自然な音でスイングする。しかも指捌きが正確。とっても良く響くピアノで、アドリブ・フレーズがクッキリと浮かび上がる。本当に素敵なピアノである。小野満、白木秀雄、渡辺貞夫などと共演、戦後の日本のジャズ界をリードしてきた「リトル・ジャイアント」、という触れ込みは伊達ではない。
八城のピアノはバックに回っても素晴らしい。松本英彦のテナー・サックスのバックに回った時のコンピングの素晴らしさ。フロントのスリーピー松本のテナーをしっかりと惹き立てている。フロントの松本もとても気持ちよさそうにテナーを吹き上げている。決してテナーのフレーズを邪魔しない、それでいて、良いタイミングで「ポロンポロン」と小気味の良いフレーズを差し入れてくる。良い感じだ。
2曲目の「Fantastic That's You」がヤバい。八城の清涼感溢れる硬質なタッチの伴奏が流れてくると、思わず耳をそばだてる。前半は八城のピアノ・トリオの演奏が絶品。本当に上質のバラード演奏。思わず「鳥肌、チキン肌」である。そして、演奏半ばで松本のテナーがスッと入ってくる。力強くも優しい柔らかい、それでいて芯のしっかり入ったテナー。これが日本人ジャズなのか。ビックリするやら誇らしいやら。
名エンジニア菅野沖彦さんが始めたトリオの「モダンジャズ・シリーズ」、隅に置けないアルバムばかりだが、この八城一夫の『Drivin'』は、僕にとって特別な一枚だ。日本人ジャズが、ここまでスタンダード曲を演奏し切るのか、それも「日本人ジャズ」らしい演奏で、だ。加えて、イラスト基調のジャケットも良い味を出している(写真左のオリジナル盤)。この盤、謹んで「ジャズ喫茶で流したい」。
東日本大震災から8年10ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
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