まだまだ若い者には負けない盤
ジャズの世界では「レジェンド」と呼ばれる現役のジャズマンが、意外と元気である。生楽器って意外と体力を使うのだが、60歳、70歳を過ぎても、バリバリに吹きまくり、弾きまくる「レジェンド」が多いのには驚く。「レジェンド」級のジャズマンって、当然、演奏テクニックは高度なものを持っている。このテクニックが高度なほど、無駄な体力や肺活量を使わないのかもしれない。とにかく「レジェンド」級のジャズマンが元気に吹きまくる、弾きまくる盤に出会うと無条件に嬉しくなる。
George Coleman『The Quartet』。2019年5月20日、NYのSear Sound Studio C での録音。ちなみにパーソネルは、George Coleman (ts), Harold Mabern (p), John Webber (b), Joe Farnsworth (ds)。ジャズ・テナーの存命レジェンドの一人、ジョージ・コールマンがリーダーのアルバム。コールマンって、1935年3月生まれだから、録音当時は84歳。う〜ん凄い。
というのも、この盤でのコールマン、吹きまくっている。演奏の編成は、テナー・サックスがワンホーンのカルテット構成。フロント楽器がテナー・サックス1本なので、とにかく一人で吹きまくりである。84歳の高齢でこの吹きっぷり。テナー・サックスの音だけ聴けば、40歳〜50歳代の油の乗りきった、ベテランのサックス奏者が吹いていると感じるんだが、いやはや、コールマンは84歳です。
しかも、この盤、選曲が面白い。冒頭は、ジャズクラブ「Smoke」のオーナー、Paul Stache に捧げたコールマンのオリジナル「Paul’s Call」から始まるのですが、続く2曲目は、シャンソン歌手、シャルル・トレネの美しいラブソング「I Wish You Love」。3曲目は、エリントンの小粋な名曲「Prelude to a Kiss」。続く4曲目は雰囲気がガラリと変わって、ハーブ・アルパート&ティファナ・ブラスの演奏でもお馴染み「Lollipops and Roses」。
他にもアート・ブレーキーの名作『モーニン』に収録されているゴルソン作「Along Came Betty」、カール・フィッシャー作の素敵なバラード曲「You’ve Changed」、はたまた、アントニオ・カルロス・ジョビンのボサノバ曲「Triste」等々、様々なスタイル、様々な志向の楽曲が並んでいる。ベテランになれば、自分の得意とするスタイルや志向の曲を固めて、演奏の負担を軽減したくなるのだが、この盤での「レジェンド」コールマンには頭が下がる思いだ。
今年85歳、モダンジャズ・テナーの至宝ジョージ・コールマンの最新作。バラエティにとんだ選曲が素晴らしく、これを全て、演奏仕切ってしまうコールマンも素晴らしい。バックを支えるリズム・セクションのピアノには、レジェンドの盟友ピアニスト、ハロルド・メイバーンが座る。このメイバーンのバッキングも見事。とにかく、この盤、二人のレジェンドのパフォーマンスが聴きもの。まだまだ若いもんには負けへんで、です。
東日本大震災から8年11ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
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