教科書的なピアノ・トリオ盤です
ジャズ批評 2020年1月号(No.213)の特集が「ピアノ・トリオ最前線2020」。宣伝文句が「大御所の新作から期待の若手まで、ピアノ・トリオにこだわった120枚を一挙紹介」。ざっと読んでみて、やっぱり、ピアノ・トリオは面白い、奥が深いなあ、と改めて感心する。ピアノ・ベース・ドラムの3楽器の演奏形態なんだが、これだけのバリエーションがあるのだ。ピアノという楽器は恐ろしい。
捻りを効かした演奏も良いし、モーダルで自由度の限りなく高い演奏も良い。フリーキーな演奏も時には良いし、バップなピアノ演奏も聴いていて楽しい。そんな中で、時々「端正で明確なタッチで、アドリブ展開が流麗な」ハードバップで教科書的なピアノ・トリオの演奏に立ち返りたくなる。ピアノは流麗にアドリブ展開し、アコベは重低音をブンブン鳴らしながらビートを刻み、ドラムは躍動的なリズムを供給しつつ、他の楽器を鼓舞する。
Ray Brown Trio『Soular Energy』(写真左)。1984年8月の録音。ちなみにパーソネルは、Ray Brown (b), Gerryck King (ds), Gene Harris (p)。正確なタイトルは、"Soular Energy" の次に "The Ray Brown Trio Featuring Gene Harris" と入っている。この盤は、ブルーノートの『スリー・サウンズ』というグループのリーダー=ピアニスト、ジーン・ハリスの復帰作でもある。
実に端正なピアノ・トリオである。演奏全体の雰囲気は、ハードバップ〜ファンキー・ジャズの中間。適度なファンクネスとやや少なめの音数。激しく燃え上がる演奏とは全く無縁な、ゆったりとした、適度な「間」を活かした余裕度の高い演奏。明確なタッチと繊細な表現が共存する、趣味の良い、癖の無い、小粋なジャズ・ピアノ。もう少し音数が少なければ「カクテル・ピアノ」化するところをブルージーなアドリブ展開で、しっかりとジャズに留めている。
リーダーはベーシストのレジェンド、レイ・ブラウンなので、彼のアコベがとても良い音で録られている。かつ、レイ・ブラウン自身がノリノリのアコベを弾きまくっている。しかも、この盤ではその弾きまくるアコベが耳に付かない。レイ・ブラウンがしっかりと音を選んで、ジーン・ハリスに合ったベースラインを弾き込んでる。レイ・ブラウンの職人気質の面目躍如である。この盤のレイ・ブラウンのアコベは聴きものだ。
ゲリック・キングのドラムも音数が適度で堅実。ジーン・ハリスのピアノとレイ・ブラウンのアコベのフレーズを決して邪魔しないところはまさに「職人技」である。端正で明確なタッチで、アドリブ展開が流麗、ブルージーでジャジーな音の響きは「安心、安定のハードバップ」なピアノ・トリオ。「Cry Me A River」「That's All」等のバラードの演奏も良い。良い意味で「教科書的な」ピアノ・トリオ盤である。
東日本大震災から8年11ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
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