音楽喫茶『松和』の昼下がり・72
我が国では、1970年代後半から徐々に純ジャズ・レコードの新盤がリリースされつつあった。電気楽器がメイン、ソフト&メロウなフュージョン・ジャズの反動もあっただろうし、ハービー・ハンコックの「V.S.O.P.」の成功もあった。僕がジャズを聴き始めた頃の話で、この新しい純ジャズのレコードは耳に心地良く響いた。僕もせっせと当時の新盤の純ジャズ・レコードを入手した「くち」だ。
Roland Hanna『GLOVE』(写真左)。1977年10月15日、青山ビクタースタジオでの録音。ちなみにパーソネルは、 Roland Hanna (p), George Mraz (b), Motohiko Hino (ds)。録音場所からお判りのとおり、日本のレーベルの制作盤。当時、TRIOレーベル初のダイレクト・カッティング・ レコードであった。
帯紙のメッセージが振るっている。「音のトリオが自信を持ってお送りする、ダイレクト・カッティング・レコード第一弾。かって、これほど音楽性を生かしたダイレクト・カッティング・レーコードが存在したか !!」。とにかく、音の良さを前面に押し出したキャッチ・コピーであるが、このピアノ・トリオ盤、パーソネルのジャズメンそれぞれの素晴らしい演奏が体感できる好盤なのだ。
ジャケットを見て、まずは懐かしさがこみ上げてくる。こんな安易なジャケット・デザインもないよな、とか思いながら、この盤をかけて貰って、スピーカーから出てきた音に、思わず絶句したのを覚えている。素晴らしい。ローランド・ハナのピアノは強烈な個性は無い。いわゆる「総合力」で勝負するタイプのピアニスト。タッチが切れ味良く明快で典雅。まず、ハナのアドリブ・フレーズの弾き回しに「ハッ」とし、聴き惚れる。
バックのジョージ・ムラーツのベースがこれまた「良い」。バッチリとピッチが合った、ソリッドで骨太なウォーキング・ベース。躍動感豊かなベースにサポートされながら、ハナが気持ちよさそうに典雅でファンキーなフレーズを弾き回す。そして、我らが日本人ドラマーの代表格、日野元彦。大胆かつ細心なドラミングで、演奏全体のリズム&ビートをシッカリと支えている。
このトリオ、スイング感が半端ない。ハナのファンクネス、ムラーツの躍動感、日野のダイナミズム。この3者が一体となって、切れ味の良い、ソリッドなスイング感を醸し出している。これがこの盤の一番の「良さ」。そして、ハナのためらいを感じさせない、勢いのある弾き回しが牽引するドライブ感。これがこの盤の二番目の「良さ」。ダイレクト・カッティングの緊張感も心地良い。ジャズ喫茶の昼下がりにピッタリの好盤です。
東日本大震災から8年10ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
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