ドリューにミュージカルの楽曲
ケニー・ドリューのピアノは、ジャズ者初心者の頃から大好きである。典型的なバップ・ピアニストで、テクニックも十分、明確なタッチでダイナミックな展開が身上。ファンクネスを漂わせながら、唄うようにメロディアスで典雅なフレーズを弾き回す。そんなドリューのピアノがお気に入りである。
Kenny Drew『Pal Joey』(写真左)。1957年10月15日、NYでの録音。ちなみにパーソネルは、Kenny Drew (p), Wilbur Ware (b), Philly Joe Jones (ds)。ドリューお得意のピアノ・トリオ編成。明確なタッチでダイナミックに弾き回すドリューにとっては、旋律を奏でるフロントの役割は自分のピアノで十分なんだろう。
この盤は、人気ミュージカル「Pal Joey」(1940年初演で1950年代には繰り返し上演。1957年にはフランク・シナトラ主演、邦題『夜の豹』で映画化されている)の楽曲を採り上げている。主人公はプレイボーイな流れ者シンガーとのことで、収録された楽曲はどれもが魅力的な曲ばかり。そんな楽曲から8曲を選んで、ピアノ・トリオとして演奏している。
ミュージカル曲がベースなので、ドリューのピアノの個性のひとつである「唄うようにメロディアスで典雅なフレーズを弾き回す」部分がバッチリ填まっている。明確なタッチと相まって、ベースの楽曲の良い旋律がクッキリと浮かび上がり、そのコード展開を基にしたアドリブは、ドリューのダイナミックな弾き回しで典雅に展開する。ドリューのピアノに「ミュージカル曲」が良く似合う。
バックのリズム隊も良い味を出している。ドラムのフィリー・ジョーは、バップなドラムをダイナミックにバッシバッシ叩きまくる印象があるが、この盤では、バラード曲は繊細なシンバル・ワークを、軽快な曲ではダイナミックではあるが、楽曲の旋律の邪魔にならないよう、配慮の行き届いた「味のある」ドラミングを聴かせてくれる。フィリー・ジョーの実力を遺憾なく発揮している。
ちょっと奇妙に捻れたベースが個性のウエアもこの盤では、しっかりと低音を響かせた、しなやかなウォーキング・ベースを聴かせてくれる。この端正なウエアのアコベは聴きどころ満載。ウエアのベストプレイのひとつとしても良いのでは、と思う。
「Pal Joey」という人気ミュージカルの楽曲を採用することで、実に魅力的なピアノ・トリオ演奏をものにしている。好盤です。
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