新しい響きが詰まったエレジャズ
Charnett Moffett(チャーネット・モフェット)の名を知ったのは、1984年リリースの『Manhattan Jazz Quintet』だった。モフェットは1967年生まれ。当時、弱冠17歳。あまりに若すぎるデビューだった。当然、我が国の硬派なジャズ者の方々からは「若すぎる」という理由で「プレイが青い」とか「成熟さに欠ける(当たり前)」とか、けちょんけちょんに低評価された。
でも、僕の耳にはそんなに酷く聴こえなかったんですがねえ。基本はシッカリしているし、テクニックも優秀。ソロのフレーズは若干平易になるが、それは年齢を重ね、経験を積めばクリアされるもの。そんなに酷評されるプレイでは無かったと思うんですが。そんなモフェットも今年で53歳。中堅のベーシストである。3年に一枚程度のペースでリーダー作をリリースしている。ベーシストとしてはまずまずの数で、人気ベーシストの一人と数えて良いだろう。
加えて、ベースという楽器はリズム・セクションの一角を担う、リズム楽器のひとつ故、派手なソロや弾き回しが出来ない。特にベーシストのリーダー作は、そのコンセプトを何処に置くか、プロデュースに苦心するのだが、モフェットは「自らの演奏したいスタイルのジャズ」をリーダーとして表現する、というコンセプトで成功している。そのコンセプトの中で、超絶技巧なベースも披露してくれているのだから堪らない。
Charnett Moffett 『Bright New Day』(写真左)。2019年8月のリリース。「The Bright New Day Band」名義のアルバム。ちなみにパーソネルは、Charnett Moffett (el-b), Jana Herzen (el-g), Brian Jackson (p, syn), Scott Tixier (ac/el-vln), Mark Whitfield, Jr (ds)。エレギとヴァイオリンがフロントの変則クインテット構成。このエレギとヴァイオリンの存在が、このアルバムの個性を決定付けている。
モフェットの「完全なエレクトリックのアルバムを作ったらどうだろう?」という動機で作成されたリーダー作。これまではアコベが「ほぼ」メインだったモフェットがこのアルバムでは、全編フレットレスのエレベで、曲によってはヴォーカルを披露するという冒険的内容。これが大成功。これだけ音の表情豊かなエレベを聴くことはなかなか無い。
様々なニュアンス豊かなエレベに乗って、フロントのエレギとヴァイオリンが、これまた、印象的なアドリブ・フレーズを展開する。コンテンポラリーでネイチャーな響きが豊かなエレジャズ。パット・メセニー・グループ(PMG)の音世界に似てはいるが、PMGより、音が暖かくエッジが丸い。かつコンテンポラリー度合いが高く、AORな雰囲気も漂う。意外と新しい響きが詰まったコンテンポラリーな純ジャズで、結構、癖になる。エレジャズ好きのジャズ者にはマスト・アイテム。
東日本大震災から8年9ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
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