キースのソロの個性と発展を聴く 『Paris Concert』
いつもどこかに散りばめられているグルービーなリズム&ビートはどこへやら。現代音楽風で内省的、ピアノの響き、リズム&ビートはクラシック風。クリスタルでクリアで内省的で、超絶技巧なクラシック・ピアノの様な展開。演奏自体は完全即興演奏なので、その「即興演奏」の部分で、このライブ盤でのキースのソロ・ピアノは辛うじて「ジャズ」の範疇に留まる。『Dark Intervals』で固まった、キースのソロピアノの方向性。
Keith Jarrett『Paris Concert』(写真左)。1988年10月17日、Salle Pleyelでのライブ録音。僕が、キースのソロピアノの方向性を決定付けたポイントと感じている『Dark Intervals』の次のソロピアノ盤である。収録曲、というか収録パートは3つ。「October 17, 1988」と「The Wind」「Blues」。いよいよ、『Dark Intervals』で固めたソロピアノの演奏の方向性のお披露目である。
最初のパート「October 17, 1988」が、現代音楽風で内省的、ピアノの響き、リズム&ビートはクラシック風である。暗く重い出だし。徐々にポジティヴな展開に変化しつつ、穏やかでリリカルで静的な展開に着地し、最終的に昇華され浄化されるようなラスト。途中、左手のビートが活躍する展開はあるが、ビートの質は「均一ビート」。ジャジーなオフビートでは無い。
最初のパート「October 17, 1988」は純粋にジャズと解釈するのには、ちょっと無理がある。演奏が「即興」なので、音楽のジャンルに分類するのには「ジャズ」しかない、という感じで、このキースのソロ・パフォーマンスは「ジャズ」とされるが、どちらかと言えば「クラシック」と解釈して良いと思う。もともと、キースはクラシック・ピアニストとしても相当の実力を持っているので、意外と「言い得て妙」だと思うのだが。
しかし、2つ目のパート「The Wind」は、ジャズ・スタンダード曲。ミュージシャンズ・チューン。このパフォーマンスはどこを取っても「ジャズ」。ピアノの響きと展開はまだ「クラシック」の傾向が強いが、右手の即興フレーズはしっかりと「ジャズ」化している。そして、ラストのパート「Blues」で一気に、ソロピアノのパフォーマンスはジャズになる。これが絶妙なのだ。この「Blues」には、いつもどこかに散りばめられているグルービーなリズム&ビートが戻って来ている。
このライブ盤の収録された頃は、キースのソロ・パフォーマンスはまだ「ジャズ」だと解釈されていた。そこに現代音楽風で内省的、ピアノの響き、リズム&ビートはクラシックな演奏。この即興クラシックな演奏はまだまだ聴く方からすると「毒」がある。その「毒」を中和する役割を担ったのが、この「Blues」。メインディッシュの後のデザートの様な味わい。この『Paris Concert』は収録されたパフォーマンスのバランスがとても良い。キースのソロピアノの代表作の一枚として良いと思う。
東日本大震災から8年8ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
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