異端なキースの初ソロ・ピアノ盤 『Facing You』
先日、キースのソロ・ピアノ盤を久し振りに聴いて、思わず、キースのソロ・ピアノ盤の聴き直しを再開した。ピアノ・ソロ盤は鑑賞するのがちょっと面倒。強弱のメリハリが付いたピアノ・ソロをリスニングするので、家で聴くにはある程度のボリュームが必要になる。このボリュームが問題で、大きな音の部分にピークを合わせると、弱いタッチの部分が聞こえないし、弱いタッチに合わせると、大きな音の部分が耳に突き刺さる。ボリュームの微妙な調整が鍵になる。
野外で聴く時は、イヤホンの性能が大切になる。密閉度が高いと弱いタッチもよく聴こえるが、周囲の音が全く聴こえないので、とにかく危険だ。と言って、密閉度が低いとソロ・ピアノの細かいニュアンスが全く判らなくなる。それと聴く場所も選ぶ。僕は電車の中、朝夕早めに並んで、席に座って、ジャズを聴く。意外と電車の中って静かなんですよ。しかも最近のイヤホンの音も凄くよくなったので、通勤の往き帰りでもソロ・ピアの盤が聴ける様になった。
Keith Jarrett『Facing You』(写真左)。1971年11月10日の録音。キース初のソロ・ピアノ盤。ECMの1017番。オンマイクのデッドな音が、このキース初のソロ盤の前衛性を際立たせる。リズム&ビートが明確にゴスペルチックでジャジー。右手のフレーズは米国フォーキーなルーツ・ミュージックの響き。マイルス・デイビス・セプテットでのコンサート公演の翌日での録音。この音世界がキースの本質だと感じている。
冒頭の「In Front」が強烈な印象。不規則に旋律に絡むリズム、仄かにゴスペルチックなビート、そして、無調が基本ではあるが、決して難解さを感じさせない、アーシーで浪漫溢れるフォーキーな旋律。クラシックの様に調性が取れた部分は殆ど無い。無調で前衛を感じる。左手のビートが無調の展開に「規律」をもたらす。そういう意味で、このピアノ・ソロは明らかにジャズ。
そして、半ば辺りで出てくる、キースの「唸り声」。既に初ソロ・ピアノ盤の冒頭の1曲で「唸っている」。但し、唸りのボリュームはできる限り絞り込まれている(笑)。この盤はまだ完全な即興演奏では無い。曲毎にしっかりとした起承転結がある。しかし、そこが良い。そこが聴き易い。そう言う意味で、このキースの初ソロ・ピアノ盤は、後のキースのソロ・ピアノ盤とは一線を画する盤ではある。
ECMレーベルの総帥、マンフレッド・アイヒャーの野望を感じる。欧州ジャズの前衛の担い手、ECMレーベルに必要なもの。他のレーベルに無い、ECMならではの演奏フォーマット。キースのソロ・ピアノは、ECM独特のエコーの映える。ECMにしか出来ないキースのソロ・ピアノ。アイヒャーとキースのコラボがとても良い形で音になっている。キースのソロ・ピアノとしては異端ではあるが、この初ソロ・ピアノ盤、僕の大のお気に入り盤である。
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