亡きケニー・カークランドを偲ぶ
1980年代半ばからの純ジャズ復古の後、お気に入りとなったピアニストが幾人かいる。ケニー・カークランドもそんなピアニストの一人。1955年9月、米国ニューヨーク州ブルックリンの出身。僕は、1970年代後半から、ミロスラフ・ヴィトウスや日野皓正との共演で、カークランドのキーボード・ワークを耳にした。以前のモード奏法とは異なる、新鮮な響きとアプローチが印象に残った。
そして、1980年代に入って、ウィントン・マルサリスの『ウィントン・マルサリスの肖像』でのプレイ、ブランフォード・マルサリスの『シーンズ・イン・ザ・シティ』でのプレイ。スティングの『ブリング・オン・ザ・ナイト』でのプレイ。これらの客演盤でのパフォーマンスで、一気にお気に入りのヒアニストになった。もはや、明らかに昔のモード奏法とは異なる、新しい響きとアプローチのモダンなピアノ。
『Kenny Kirkland』(写真左)。1991年、GRP Recordsからのリリース。邦題『ケニー・カークランド・デビュー!』。そんなケニー・カークランドの唯一のリーダー作である。唯一というのも、ケニー・カークランドは、1998年11月11日、43歳で急逝している。もともと、客演が活動の主だったので「ファースト・コールなバイ・プレイヤー」という呼び名もあるくらいである。よって、この盤がケニー・カークランドの唯一のリーダー作となってしまった。
ちなみにパーソネルは、Kenny Kirkland (1, 2, 4, 6〜10) (p), (5, 11) (key), Roderick Ward (7)(as), Andy Gonzalez (8, 10), Charnett Moffett (1, 4, 7), Christian McBride (6) (b), Don Alias (8) (bongos), Jerry Gonzalez (tracks: 8, 10) (congas,perc), Jeff "Tain" Watts (1〜4, 6〜8), Steve Berros (8, 10) (ds), Don Alias (5, 11) (perc), Branford Marsalis (2, 4, 9) (ss), (1, 10) (ts)。
この盤の演奏内容は、徹頭徹尾、モーダルなジャズ。旧来のモード奏法の焼き直しでは無い、新しいアプローチ、新しい響きを持ったモード・ジャズである。そんな中、リーダーのカークランドのピアノは、左手のブロックコードのコンピングが個性の、タッチの明確な、音のエッジのたった「ハービー・ハンコック」の様なピアノ。聴いていて心地良く、印象的なフレーズが流麗に耳に流れ込む。ビート感がしっかり残って、実に新しく良好なモード・ピアノ。
但し、内容があって存在感があるので困るのだが、ブランフォード・マルサリスのサックスがかなり良い音を出しているので、その分、バックのカークランドのピアノよりも耳を奪われてしまう。カークランドのデビュー盤としてはちょっと勿体無い事である。やはり、ケニー・カークランドについては、ピアノ・トリオの編成で、存分に耳を傾けたかったなあ。しかし、その願いは叶わない。43歳没。あまりに早過ぎる死であった。
東日本大震災から8年7ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。
« 繊細で印象的でスピリチュアル | トップページ | 今もフュージョン・ジャズは健在 »
コメント