ブラジリアン・クロスオーバー 『Identity』
マイルス・スクールの門下生のリーダー作をチョイスし、聴き直している。いずれの門下生もマイルス・スクールを卒業した後、何らかの形で、マイルスの「エレクトリック・ファンク」の影響を反映している。流石だなあ、と常々感心している訳だが、このパーカッション奏者は、マイルスの「Bitches Brew」から「Jack Johnson」などの重要作に参加し、ブラック・ファンクなビートの担い手の一人として重要な役割を果たした。
Airto Moreira『Identity』(写真左)。1975年の作品。パーソネルは、Airto Moreira (per, ds, vo), Herbie Hancock (key), Flora Purim (vo), David Amaro (g), Robertinho Silva (ds, per), Raul de Souza (tb), John Heard (b), John Williams (b), Louis Johnson (b), Ted Lo (org), Wayne Shorter (ss), Egberto Gismonti (g, key, arr)。プロデューサーはHerbie Hancock。
パーソネルを見渡せば、当時のクロスオーバー・ジャズの名うて達が大集合である。そんな「どんな志向の音でも大丈夫」なメンバーの中、ブラジル音楽の鬼才「Egberto Gismonti」の全面参加によって、ブラジル志向のブラジル人としての「アイデンティティ」を強く意識したアルバムに仕上がっている。クロスオーバー・ジャズの面目躍如である。
パーカッションの奇才、アイアート・モレイラのリーダー作だけあって、多彩な「リズム・シャワー」が見事。ブラジルのリズムが蔓延していて、躍動的でポジティブな展開。過度のブラジル・サンバ臭さがこの盤の特徴。エグベルト・ジスモンチが大活躍で、ギター、アコピ/エレピ、シンセからウッド・フルートまで吹きこなしている。やはり、このジスモンチの全面参加がこのアルバムの個性を決定付けている。
ハンコック、ショーターもブラジル・クロスオーバーの雰囲気の中で、キッチリと「キメ」ているのはさすが。ほかの目立ったメンバーとしては、デヴィッド・アマロのギターが強烈、ハウル・ジ・ソウザのトロンボーンも好演。フローラ・プリムのボーカルも効果的。参加メンバーそれぞれが、実に良い音を出していて、どの曲も、ブラジリアン・クロスオーバーな音の饗宴です。
ビリンバウ(ブラジルの伝統的な打弦楽器)がいい音を出している。タイトルは「Identity=正体」。「俺って、やっぱ、ブラジル音楽がメインなんだよね〜」というアイアート・モレイラの声が聞こえてきそうな程の、ブラジリアン・フレーバー満載なクロスオーバー・ジャズ。ここまで、徹底してブラジリアン・フレーバーを全面に押しだしていると、もはやこのアルバム、「キワモノ」一歩手前の雰囲気です(笑)。でも好盤です。
東日本大震災から8年6ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
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