日本人によるオルガン・トリオ
最近の我が国のジャズ、「和ジャズ」のレベルがどんどん高くなっている。1960年代から、もともと純ジャズについては、内容のあるアルバムが出ていたが、如何せん数が少なかった。それからなかなか、その「数」が増えない時期が続いたのだが、1990年代後半辺りから、和ジャズの裾野が一気に拡がり始めた。最近では毎月、コンスタントに好盤がリリースされている。
鈴木央紹『Favourites』(写真左)。今年5月のリリース。ちなみにパーソネルは、鈴木 央紹 (ts, ss), 宮川 純 (org), 原 大力 (ds)。シンプルなトリオ編成。我が国ではまだまだ珍しいオルガン・トリオである。収録曲を見渡せば、小粋でマニアックなスタンダード曲をメインに選曲している。これがまあ、見事なアレンジで、スタンダード曲の新しい解釈を提示している。
冒頭の「Where or When」を聴けば、思わず「ウェザー・リポート風か?」と思ってしまう。音の雰囲気、浮遊感がウェザー・リポートを想起させ、鈴木のテナーが「ウェイン・ショーター」風。しかし、この演奏を聴いて「上手いなあ」と感心。本家ウェザー・リポートの音より、シンプルで判り易く、テナーの音はウェインのテナーを平易にした感じの、これまた判り易いブロウ。
で、2曲目の「Witchcraft」に移ると、雰囲気は、シンプルで切れ味の良いコンテンポラリーな純ジャズの音世界に。オルガン(hammond b-3)とドラム、そしてテナー・サックス。テナー・サックスの音がネオ・ハードバップ風の硬派でテクニカルでシャープなブロウ。どっかで聴いた雰囲気やなあ、と思っていたら、そうそう、ジョシュア・レッドマン、サム・ヤエル、ブライアン・ブレイドの「YAYA3(ヤ・ヤ・キューブド)」を思い出した。
以降、この「YAYA3」風の演奏が展開される。しかし、日本のジャズが、こんなにコンテンポラリーな、ネオ・モーダルな純ジャズを展開することが出来るなんて、なんだかとても嬉しくなる。「YAYA3」風だが、ファンクネスは希薄、しっかりオフビートしていてジャジーな雰囲気は蔓延している。オルガンの音も良い意味であっさりしていて、日本人ジャズの「音の個性」がしっかり聴いて取れる。
適度にアグレッシブで、明らかに「攻めている」ジャズ。決して聴き手に迎合していない。そして、何回か繰り返し聴いていると、結構、難しいことをやっているのに気がつく。それがシンプルに聴こえるのだから、この盤に詰まっているジャズのレベルは高い。日本人ジャズの「進化」を強く感じる、鈴木央紹の新盤である。
東日本大震災から8年5ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
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