昆虫をテーマにしたコンセプト盤
日本のジャズについては「進化」してきたと感じている。1950年代の終わりから1990年代までは、米国のジャズ・シーンをずっと追いかけ続けて、いかに早く米国の最新トレンドを入手し、日本のジャズに反映するか、がポイントだった。21世紀に入って、米国のトレンドを追わずに、日本独自の展開や音作りがなされるようになる。そして、その時代は今も続いている。
TRIX『ECCENTRIX』(写真左)。今年8月21日のリリース。出来たてホヤホヤの新盤である。2004年の「INDEX」以降、16年連続のオリジナル盤のリリースとなるそう。フュージョン・ジャズ系のバンドとして素晴らしいことである。ちなみにパーソネルは、熊谷徳明 (ds), 須藤満 (b), AYAKI (key), 佐々木秀尚 (g)。曲名を見たら判る「昆虫」をテーマにしたコンセプト・アルバムである。
元カシオペアのドラマー熊谷徳明と元Tスクエアのベーシスト須藤満を擁した、現代の日本のフュージョン・バンドの先頭集団を走る「TRIX」。日本のフュージョンの2トップ、カシオペアとTスクエア両方のDNAを受け継いだ音作り。というか、今回の音作りは、プログレッシブ・ロックやテクノ・ポップの音の雰囲気がさらに加わって、TRIXならではの個性的な音作りに成功している。
冒頭の「中国天道虫」の最初の部分を聴いた時、思わず「これってYMO?」って思ったものだ。思わずテクノ・ポップ風のフュージョン・ジャズかと思ったら、アドリフ展開の部分はまるで「プログレッシブ・ロック」。ファンクネスは皆無、オフビートも抑え気味に、キーボードとエレギのフレーズが走って行く。ジャジーな要素はその演奏の複雑なコード進行とそれぞれの楽器のハイテクニックに留まる。
しかし、2曲目以降は、その1曲目の傾向を踏襲しつつ、オフビートを駆使しつつ、流麗でスインギーな「現代のフュージョン・ジャズ」を展開する。それぞれの曲もキャッチャーなフレーズてんこ盛りで、どの曲も聴いていてとても楽しい。「第4期TRIXサウンド」がこの盤で確立されたのでは、と感じる充実度。ロック色が強くなったなあ、とは思うが、演奏のオフビートとスインギーな展開は、まだまだ「フュージョン・ジャズ」だろう。
こういう演奏が当たり前の様に出てくる様になった「我が国ジャズ・シーン」。我が国のジャズ独特の「進化」がまだ聴いて感じとれる、そんな印象を持たせてくれる好盤です。従来からのフュージョン者ベテランの方々のみならず、昔、プログレ・ファンだった方がにもお勧めです。まだまだ「エキセントリックな」TRIX。なかなかの好盤です。
東日本大震災から8年5ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
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