ソニー・クリスの個性を聴く
米国西海岸ジャズのアルト・サックス奏者、アート・ペッパー、そして、バド・シャンク。そう言えばもう一人いる。ソニー・クリスである。テネシー州のメンフィスに生まれ、15歳でロサンゼルスに移住。1956年にニューヨークのインペリアル・レコードと契約し、一連の好盤を録音している。1965年にはプレスティッジ・レコードと契約し、ポップなハードバップ盤をリリースし、ヒットさせている。
Sonny Criss『Jazz- U.S.A.』(写真左)。Imperialレコードからのリリース。1956年1月26日、2月24日、3月23日の3セッションからの選曲。ちなみにパーソネルは、Sonny Criss (as), Bill Woodson (b), Chuck Thomson (ds), Barney Kessel (g), Kenny Drew (p)。パーソネルを見渡すと、西海岸ジャズの中堅の優れ者達が集結している。時は1956年。一番、西海岸ジャズが充実していた頃。この盤の音は期待出来る。
ソニー・クリスのアルト・サックスはとても特徴的な音がする。アルト・サックスが目一杯、鳴っているような、強く真っ直ぐブリリアントな音。音の強弱はあまり考えずに、目一杯、アルト・サックスを吹き上げる。いかにも「アルト・サックスらしい」音。そんなポジティブで「根明」なアルト・サックス。そんなソニー・クリスの音が心ゆくまで堪能出来る。
このポジティブで「根明」なアルト・サックス。恐らく、好き嫌いが分かれるだろうなあ。陰影に乏しいところがあるんで、そこが「表現力に乏しい」と評されるのではないか、と危惧する。陰影には乏しいかもしれないが、強弱でその部分をカバーしている。ので、表現力に乏しい、という感じは全く無い。
アドリブ・フレーズも聴き応えのある展開で、この「根明」なアルト・サックス飽きるかな、と思ったが、意外と全編聴き通して飽きることが無い。バックのバーニー・ケッセルのギターを含めたリズム・セクションも、さすが名うての名手たち、手慣れた感じで、内容のあるバッキングを展開している。西海岸ジャズらしく、端正で整った演奏は安心して楽しめる。
ソニー・クリスのアルト・サックスは「あっけらかん」としている。とにかく、アルト・サックスを吹くのが楽しくて仕方が無い、という感じで、脳天気に吹きまくる。これもまた彼のアルト・サックスの魅力である。明らかに、チャーリー・パーカーの影響は受けているが、根明な音の裏に「翳りと哀愁」を感じさせる、これもまたソニー・クリスの個性である。この盤、ソニー・クリスの個性を確認するのに最適な盤だろう。好盤です。
東日本大震災から8年5ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
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