ハーシュの曲作りとピアノの個性
このピアニストの名前を覚えたのは、実は最近のことである。Fred Hersch(フレッド・ハーシュ)。ネットでその名を紐解けば「ビル・エヴァンスのリリシズムを継承し、ブラッド・メルドーなど数々の後進からもリスペクトを受ける名匠」とあるんだが、僕は21世紀になるまで知らなかった。
1955年生まれだから今年で64歳。ベテランの域に入った年頃で、耽美的で端正で流麗なピアノを聴かせてくれる。「凛とした」爽やかなタッチのピアノ、とでも形容したら良いだろうか。かといって、耳当たりの良い、イージーリスニング風のピアノかと思いきや、結構、硬派で辛口なアドリブ・パフォーマンスを展開したりして、これが好感度抜群なのだ。
Fred Hersch & The WDR Big Band『Begen Again』(写真左)。そんなフレッド・ハーシュが、WDR( 西ドイツ放送= Westdeutschen Rundfunks)Big Bandとの共演を果たしたアルバムである。アレンジャー & コンダクターには、才人ヴィンス・メンドーサを迎えており、聴く前から、その内容が期待出来る。
全9曲すべてフレッド・ハーシュのオリジナルをヴィンスがアレンジ。「Begin Again」から始まり、近年のナンバーを中心としつつ、十八番の「Rain Waltz」や、「SongWithout Words:Ballads」「Pastorale」など、ハーシュの曲作りの個性とピアノの個性が明確に出る曲が選ばれていて、「フレッド・ハーシュ再発見」な趣のある内容。
面白いのは、スウィンギーでブルージーな展開を見せる「The Big Easy」や、ラテンの旋律の哀愁感とパッションがほど良く出た「Havana」など、「耽美的で端正で流麗な」枠では捉えられない、ハーシュの作曲の個性とメンドーサのアレンジの才が強く感じれられる曲が織り込まれていること。そして、ラストの「The Orb (For Scott)」は至高のバラード。
この盤は、WDR Big Bandのバッキングとメンドーサのアレンジの協力を得て、ハーシュのハーシュの曲作りの個性とピアノの個性を再認識出来る好盤である。特にハーシュの耽美的で端正で流麗なピアノが心ゆくまで堪能出来、WDR Big Bandのダイナミックで端正なビッグバンド演奏が楽しめる。「一粒で二度美味しい」なかなかの盤です。
東日本大震災から8年4ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
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