スピリチュアルな新しい響き
新しいタイプのスピリチュアル・ジャズがほぼ定着したのでは無いかと思う。激情に走らず、穏やかでモーダルな「印象的フレーズ」を展開しながら、時にフリーに傾くが、それは演奏の中のアクセントとしてアレンジされ、音の響きとフレーズから「スピリチュアル」な面を増幅させ、聴く者に訴求する、という、新しいアプローチ。
僕はこの人がこの「新しいタイプのスピリチュアル・ジャズ」に手を染めるとは想像出来なかった。確かにこのピアニストの懐は深く、様々な表現の引き出しを持っている、とは思っていた。が、ここまでのアプローチをするとは思わなかった。そう言えば、メルドーって、マルチ・キーボード奏者としての才能も確かだったことを思い出した。
Brad Mehldau『Finding Gabriel』(写真左)。今年5月のリリース。ちなみにメインは、Brad Mehldau (ac-p, syn, key), Mark Guiliana (ds) の二人。そこに、Ambrose Akinmusire (tp), Michael Thomas (fl, as), Charles Pillow (ss, as), Sara Caswell (vln), Joel Frahm (ts), Kurt Elling (vo). Gabriel Kahane (vo), Becca Stevens (vo) などがゲスト参加。
聖書からインスピレーションを得たというアルバムのタイトルからして「スピリチュアル・ジャズ」の香りがプンプン漂う。出てくる音は、現代のエレクトリック・ジャズ。ビートに乗った印象的なフレーズの洪水。冒頭の「The Garden」を聴いて、思わずぶっ飛ぶ。ファンクネスは皆無だが、かなりハイレベルなエレ・ジャズ。
そこに、疾走するビートに乗って、印象的な各種サックスの咆哮、フルートの響き、印象的に切れ込んでくるトランペット。ボイス、ボーカルも効果的かつ印象的な響きに貢献する。主役のメルドーはアコピは当然、OB-6 Polyphonic synthesizer、Moog Little Phatty synthesizeなど、印象的な音の出るシンセを駆使、Fender Rhodesも活用。とてもスピリチュアルで印象的なフレーズを連発する。マルチ・キーボード奏者の面目躍如。
ジュリアナのドラミングも新しい響き。マシン・ビートに血を通わせたような、人間的な温もりのある疾走感溢れるビートを叩き出し、撒き散らす。新しい響きの、新しいアプローチのエレクトリック・ジャズ。音の表現としては「新しいタイプのスピリチュアル・ジャズ」。まだ聴き始めたばかりの盤だが、これは「只者」ではない。暫く、折につけ、耳を傾けるつもり。新しいジャズのアプローチは腹に落ちるのに時間がかかる。
東日本大震災から8年3ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
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