ビアンキのオルガンは個性的
ジャズの新盤については、毎月コンスタントに世界各国でリリースされている。名前が知れ渡ったベテラン〜中堅ジャズメンのみの演奏だけならず、新しい顔を発掘したり、新しい響きを発見があったり。21世紀に入ってからは、全くの若手新人はともかくとして、未だ我が国ではあまりその名が知られていないジャズメンの新盤の内容が一定の水準を維持していたりする。これだから、ジャズの新盤チェックは欠かせない。
Pat Bianchi『In the Moment』(写真左)。2016年8〜9月にかけての録音。ちなみにパーソネルは、Pat Bianchi (org), Paul Bollenback (g), Byron Landham (ds), guest : Peter Bernstein(g)(2), Carmen Intorre jr. (ds)(1,4,9,10), Joe Lock (vib)(1,9,10), Kevin Mahogany (vo)(8), Pat Martino(g) (4)。リーダーのパット・ビアンキのオルガンがメインの、所謂「ジャズ・オルガン」盤。
ジャズ・オルガンの系譜としては、まずは「ジミー・スミス(Jimmy Smith)が筆頭。この人が早々のジャズ・オルガンの最終形の1つを提示。その後、ジミー・スミスのフォロワーの道は避けて、ジミー・スミスとは異なる音の「第2群」のオルガニスト、Baby Face Willetteや、Jack McDuff, Dr. Lonnie Smithが現れたが、ロックやフュージョンの波に押され、ジャズ・オルガンは徐々に衰退。現代ではちょっと盛り返して、Joey DeFrancesco、そして、Sam Yahel、Larry Goldings の名が挙げられる。
そんな、ちょっと「絶滅危惧種」のレベルになってきたオルガン・ジャズの範疇に、新しい名前として出てきたのが、この「Pat Bianchi(パット・ビアンキ)」。音的にはジミー・スミスのフォロワーでは無い。といって、「第2群」の音とも異なる。どちらかというと、ファンクネス控えめ、堅実なタッチをベースに端正な音が特徴で、現代では「サム・ヤヘル(Sam Yahel)」のオルガンの音に近いかな。いずれにせよ、スッキリとした切れ味の良い端正なオルガンの音は聴いていて清々しい。
収録の全10曲については、自身のオリジナル2曲に他の作曲による8曲。この他の作曲による8曲の作曲者を見渡すと面白い。ビアンキのオルガンの個性が良く判る。チック・コリア、レオン・ラッセル、ステービー・ワンダー、マイルス・デイビス、ウィリー・ネルソン、ビリー・エクスタイン、ウェイン・ショーター、セロニアス・モンクが選ばれている。この選曲、オルガンでやるにはちょっと異色の選曲ですね。
「ソウルフル&ファンクネス」のキーワードとはちょっと無縁な、ジャズ・オルガンとしては「ストイックな」オルガンは個性的。ファンクネスが希薄で、切れ味良く躍動感のあるオルガン。ビアンキは1975年ニューヨーク生まれ。今年で44歳になる。ジャズマンとして脂がのりきったベテランの域に入りつつある年齢。これから、この端正なオルガンに円熟味が加わっていく訳で、これからの活動が楽しみだ。
東日本大震災から8年3ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
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