ポップだがジャズに踏み留まる 『Common Touch』
ブルーノート・レーベルの4300番台。純ジャズのポップ化、イージーリスニング化。4300番台がリリースされたのは、1960年代の終わりから1970年代の初めまで。米国は公民権運動の荒波を抜け、ベトナム戦争が泥沼化の様相を呈する中、フラワー・ムーブメントが起こり、ヒッピー文化が花開いた頃。
このアルバムのジャケット写真を見ると、そんな時代のファッションが感じて取れる。Stanley Turrentine『Common Touch』(写真左)。1968年8月30日の録音。BNの4315番。ちなみにパーソネルは、Stanley Turrentine (ts), Shirley Scott (org), Jimmy Ponder (g), Bob Cranshaw (el-b), Leo Morris (ds, tracks 1-6), Ray Lucas (ds, track 7)。
リーダーでテナー担当のスタンリー・タレンタインとオルガン担当のシャーリー・スコットは、録音当時、夫婦の間柄。当時は「おしどり夫婦」で通っており、この盤でも息の合ったユニゾン&ハーモニーを聴かせてくれる。このアルバム、全編に渡って、ポップなオルガン・ジャズが展開されていて、聴き心地良く、それでいて、メインストリームなジャズとしても十分に成立する内容の濃さ。
当時のロックの好曲をカヴァーしているが、時代を反映していて面白い。なんと2曲目には、ボブ・ディランの「Blowin' In The Wind(風に吹かれて)」が、ラストのボーナストラックには、アレサ・フランクリンの「Ain't No Way」がカヴァーされている。この2曲のカヴァーがなかなかの出来だから堪らない。俗っぽさは皆無。ライトで硬派なソウル・ジャズ風の演奏に好感度が高い。
熱気を押さえた、ちょっとクールでファンキーなタレンタインのテナーが良い感じ。そこに、ライトでファンクネスを押さえた、シンプルでウォームなスコットのオルガンが絡む。オルガンとテナーの良くある取り合わせの中で、この2人は夫婦だけあって相性が良い。テナーと相性が良いオルガン・ジャズは好盤がほとんど。この盤には、テナーとオルガンの相性の良さが内容の濃さに表れている。
イージーリスニング一歩手前で踏みとどまった、ライトでポップなオルガン・ジャズです。ブルーノート・レーベルらしい端正さとお行儀の良さが見え隠れし、最終的に「ジャズ」に踏みとどまっている分、大衆受けはしなかったように思います。しかし、今の耳で振り返ると、そこが良い。「ジャズ」として踏みとどまったところに、この盤の魅力が凝縮されています。
東日本大震災から8年3ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。
« こんなアルバムあったんや・115 | トップページ | 西海岸系のフュージョンの先駆 »
コメント