ブランフォードの最新作は良い
1980年代後半、純ジャズ復古のムーブメントに乗じて台頭した「新伝承派」。その中心にいたのが、マルサリス一派。特に、次男坊のウィントン・マルサリスが最右翼。兄貴のブランフォードは、弟とはちょっと距離を置いた。純ジャズは良いが、フュージョンも良い。ロックにサイドマンとして参画するのも良い。
いわゆるブランフォード・マルサリスはマルチ・タレント。弟ウィントンは純ジャズ一辺倒。一辺倒過ぎて「疎まれ」気味。兄貴は「いい加減」と映るか「柔軟性大」と映るか。僕は「柔軟性大」と感じた。ブランフォードはマルチ・タレント。様々な方向にその才能を発揮してきた。しかし、最近は活動が落ち着いていた。
Branford Marsalis Quartet『The Secret Between the Shadow and the Soul』(写真左)。ブランフォードの3年振りのリーダー作になる。ちなみにパーソネルは、Branford Marsalis (ts, ss), Joey Calderazzo (p), Eric Revis (b), Justin Faulkner (ds)。パーソネルを見渡すと「選んでいるなあ」と思う。これは久し振りに、バリバリのメインストリーム・ジャズではないか、という期待感。
冒頭の「Dance Of The Evil Toys 」を聴くと、思わず「おおっ」と声を上げたくなる。フリー・ジャズではないか。うむむ、このところ、久し振りに硬派な骨太なフリー・ジャズを聴いた。ブランフォードのテナーは徹底的にモーダルなフレーズを吹きまくり、自由度抜群の節回し。カルデラッツォのピアノがこんなにフリーに傾倒するなんて驚き。クールで静かに熱い、現代のフリー・ジャズがここにある。
続く「Conversation Among The Ruins」は静的なバラード。ファンクネスを排除した、クールで耽美的なバラード。くすんだ単色のグラデーションの様な音色。欧州ジャズの様な静謐感。それでいて、演奏の底にしっかりとしたテンションを張っていて、叙情的に流されること無く、緩むところは全く無い。
ラストの「The Windup」は、キース・ジャレットの作。1974年のヨーロピアン・カルテットでの『Belonging』の中の1曲。限りなく自由度の高い、ほとんどフリーな演奏がスリリングであり、切れ味良く美しい。このブランフォードの最新作、最近のメインストリーム・ジャズ盤の中でも屈指の出来の良さ。聴き応え十分である。
東日本大震災から8年2ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
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