ボボ・ステンソンの新トリオ盤
ECMレーベルには、素敵な内容のピアノ・トリオ盤が多く存在する。恐らく、ECMレーベルの、西洋クラシック音楽の伝統にしっかりと軸足を置き、電化サウンドを排除し、アコースティックな表現を基本とし、限りなく静謐で豊かなエコーを個性とした録音がジャズ・ピアノにフィットするんだろう。特に、ファンクネス希薄な欧州のニュー・ジャズ系のピアノがとりわけフィットする。
ECMレーベルの「お抱えピアニスト」の一人に、Bobo Stenson(ボボ・ステンソン)がいる。ステンソンは、1944年、スウェーデン出身。10 代の時から演奏活動を始め、ソニー・ロリンズ、スタン・ゲッツ、ドン・チェリーなどとセッションを重ねていたそう。1970年代には盟友ヤン・ガルバレクと共に活動を開始し、ECMレーベル中心に好盤をリリース。現在では、ベースのアンデルス・ヨルミンとドラムのヨン・フェルトとトリオで活動を続けている。
そんなステンソンの最近の好盤の一枚がこれ。Bobo Stenson Trio『Contra la Indecisión』(写真左)。2017年5月の録音。ちなみにパーソネルは、 Bobo Stenson (p), Anders Jormin (b), Jon Fält (ds)。現在、好調に好盤をリリースしているトリオでの新盤である。選曲がふるっている。バルトーク、サティが採用され、キューバのシルヴィオ・ロドリゲスの哀愁溢れるアフロ・キューバンな佳曲が彩りを添えている。
ボボ・ステンソンのピアノがとても美しい。キースのピアノから尖ったところ、アブストラクトなところをそぎ落として、しっかりした明確なタッチでの、硬派で耽美的なフレーズが特徴。ピアノの音のエッジが適度に丸く、耳に優しく馴染む。流麗で耽美的なフレーズを駆使する曲では、限りなく美しく、暖かくてクールなピアノが響き渡る。ヨルミンのベースは唄うが如く、ベースラインを抑え、フェルトのドラムは自由自在にリズム&ビートを紡ぎ出す。
フリーな演奏では切れ味の良い、煌めきの様なフレーズが続くが、どこか優しく丸い。それはピアノだけでは無い。ヨルミンのベースも自由度高く、弾ける様なうねるようなフレーズを連発するが、どこか優しくしなやか。フェルトのドラムはポリリズミックで閃き抜群。様々な表情のフレーズを繰り出し、素晴らしく高度なテクニックで最上の表現力を発揮する。意外とこのフリーな演奏の部分が聴きものだったりする。
このトリオの演奏には北欧の自然をイメージする、クリアでクールでアーシーな音がぎっしりと詰まっている。紡ぎ出すフレーズも現代音楽っぽい幾何学的で耽美的で印象的なフレーズがてんこ盛り。北欧では、キース・ジャレットと双璧をなすジャズ・ピアノのレジェンドとして評価されているそうだが、それも納得できるこの新盤の内容。ECM好きには堪らない好盤である。
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