今の時代にジャストに響く音
今も昔も、ブルーノート・レーベルの先取性は変わらない。1950年代は、後にジャズ界の中心人物となるジャズマンの若い頃、その才能にいち早く着目して、リーダー作を吹き込ませていた。今から遡るこの10年の間は、コンテンポラリーな純ジャズや他のジャンルとクロスオーバーした現代のフュージョン・ミュージックなど、旧来のジャンルに囚われない、新しい響きのアルバムを多くリリースしている。
このアルバムもそんな先取性溢れるアルバムである。Trombone Shorty『Parking Lot Symphony』(写真左)。2017年4月のリリース。ニューオーリンズ出身のトロンボーン奏者&シンガー・ソングライターである「トロンボーン・ショーティ」のブルーノート・レーベル移籍第1弾アルバムである。トロンボーン奏者と一言でいうが、クラプトンなど、ロック界の大御所達のアルバムやツアーに参加するなど、異種格闘技的な活動が目を惹く若手有望株である。
この最新作もその内容は只者では無い。ブルーノート・レーベルからのリリースだからといって、純ジャズが展開される訳では無い。様々なジャンルの音楽的要素がごった煮の様に散りばめられているが、洗練されたアレンジによって効果的に融合され、新しい響きのフュージョン・ミュージックに仕上がっていることに驚く。特にブラス・セクションの音の重ね方に個性があって、洗練されたファンクネスの響きが芳しい仕上がりになっている。
ボーカルものを聴くとR&Bからブラコンな音かとも思うが、そのファンクネスが洗練されシンプルに表現されている分、ライトでお洒落な印象にアレンジされて、耳にスッと入ってくる。ショーティのトロボーンが鳴り響き、アドリブ展開するところなどは、現代の先端のコンテンポラリーな純ジャズな雰囲気が蔓延して心地良い。効果的に電気楽器を使用するところはフュージョン・ジャズの深化形の雰囲気が芳しく、楽器の分厚いユニゾン&ハーモニーはドラマチックで、どこかプログレッシブ・ロックな雰囲気を醸し出す。
この盤のどこがジャズなのか、と言われることが多いが、確かにこの盤の音世界はジャズという単独ジャンルに留まっているものでは無い。ジャズを基本にしてはいるが、そこに様々な音楽要素を融合して、今までに無い、新しい響きの音世界を獲得している。個々のどこがどう、という類の盤では無く、演奏全体として、トータルな融合音楽として、この盤に蔓延している旧来のジャンルに囚われない新しい響きについて、十分に評価に値するアルバムであると僕は思う。
ファンキーでありソウルフルであるが、決して、旧来のファンキー・ジャズでも無ければ、旧来のソウル・ジャズでも無い。「今」のフュージョン・ミュージックがこの盤に詰まっている。ジャズか否か、という議論はこの盤の前では不毛な議論だろう。僕はこの盤は「良い音楽」だと認識している。さすがブルーノート・レーベルで、ジャケットも素敵。意外とヘビロテになってます。
東日本大震災から8年。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
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