フランス・ジャズの魅力的トリオ
フランスという国も昔からジャズが盛んである。古くはサックスの「バルネ・ウィラン」、1980年代から90年代にかけてはピアノの「ミシェル・ペトルチアーニ」とパッと浮かぶ人気ジャズ奏者がいつの時代にもいる。フランスはもともと芸術を尊ぶ国。米国で生まれたジャズについても「即興の芸術」として長く扱われている。
EYM Trio『Genesi』(写真左)。2013年のリリース。ちなみにパーソネルは、Elie Dufour (p), Yann Phayphet (b), Marc Michel (ds)。ブルガリア人の血を引くピアニストのエリー・デュフールを中心に、ベーシストのヤン・ファイフェット、ドラマーのマーク・ミシェルという3人がリヨンの音楽院で出会い、結成したピアノ・トリオが「EYM Trio」。そのデビューは2011年。タイトルの「Genesi」はイタリア語で「創世記」の意。彼らの記念すべきデビュー盤である。
演奏の音を聴けば、明らかに米国ジャズにおけるピアノ・トリオとは全く異なった雰囲気であることが良く判る。まず、リズム&ビートにファンクネスが希薄。陰影のある奥深い響きのオフビートがユニーク。演奏の根幹に「ブルージー」な響きがほとんど感じられない。欧州ジャズはクラシック音楽の響きをメインにしており、EYM Trioも例外では無い。
テクニックは高いレベル。演奏に破綻は全く無く、走りすぎたり遅速に陥ることも無い。テクニックの高いレベルでのインタープレイはスリリング。この「スリル」が適度なテンションを産んで、このトリオの音を詰め込まない、即興の「のり代」を残したアドリブ・フレーズは不思議な落ち着きを生み出す。アドリブ・フレーズから感じる「哀愁感」が独特。
東ヨーロッパには中東風ともヨーロッパ風ともいえない不思議なメロディーやリズムが存在するが、EYM Trioはその東ヨーロッパのメロディーやリズムに影響を受けた響きが存在するように感じる。アドリブ・フレーズから感じる、この「哀愁感」は恐らくは東ヨーロッパのメロディーやリズムからの影響と推察する。この他の欧州ジャズのピアノ・トリオとはちょっと違う「哀愁感」という響きの個性。填まると癖になる。この見え隠れする不思議なメロディーとリズムが聴いていて心地良い。
アルバムのジャケットのデザインもユニークでアーティスティック。哀愁とスリルに満ちた楽曲がてんこ盛り。耽美的でアーシーで堅実な現代のピアノ・トリオ。こういうピアノ・トリオを生み出すフランス・ジャズ。現代のジャズ・シーンの中でも隅に置けない存在、隅に置けない国あることは間違い無い。
東日本大震災から8年。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
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