エルヴィンの理想の純ジャズ
このジャケットには参った。こういう変態ジャケットがところどころ存在するところも、BN-LAシリーズがイマイチ信頼されない所以なんだろう。ただでさえ、BN-LAシリーズはブルーノート・レーベルを電化〜フュージョン化して、純ジャズの世界をポップスに身売りしたと軽視されがちなシリーズなのに、だ。しかし、この首無しイラストに何か意味があったのかなあ(笑)。
Elvin Jones『Mr. Jones』(写真左)。BN-LA110-F。1972年7月の録音。ちなみにパーソネルは、Elvin Jones (ds), Dave Liebman (ts, ss, fl), Steve Grossman (ts, ss), Jan Hammer (p), Gene Perla (b), Carlos "Patato" Valdes (congas), Frank Ippolito (perc), Pepper Adams (bs), Thad Jones (flh), Albert Duffy (timpani)。当時、ポスト・コルトレーンと目された、リーブマンとグロスマンがサックスを担当している。
パーソネルを見渡すと、リーブマンとグロスマンというポスト・コルトレーンのサックス新鋭二人とベテラン・バリサクのペッパー・アダムス、そして、サド・ジョーンズのフリューゲルホーンの4管フロントが超弩級の布陣である。ピアノは後の「捻れシンセの使い手」ヤン・ハマーで、テクニカルでモーダルな演奏が意外と目立つ。ドラムは当然、エルヴィン・ジョーンズ。その脇をコンガ、パーカッション、ティンパニが固める。
この「首無しジャケット」で強い印象を与えてくれる盤だが、これ、ポリリズムの達人ドラマー、エルヴィン・ジョーンズのリーダー作である。中の演奏は徹頭徹尾、モーダルなジャズ。リーブマンとグロスマンがコルトレーン・ライクなテナーを聴かせるが、コルトレーンよりもスッキリ&ライトである。このテナー2管にアダムスのバリサクが絡んで「重厚感抜群」。コルトレーン・ライクであるが決して、アブストラクトに、フリーにならない。
この盤の演奏を聴いていると、エルヴィン・ジョーンズが気合い十分ながら、実に気分良く叩いている様に聴こえる。この盤に詰まっているモーダルなジャズは、コルトレーンがフリーに走る直前の、限りなく自由ではあるが統制の取れたモード・ジャズを彷彿とさせる。エルヴィンはあの頃のモード・ジャズが理想のジャズだったのかもしれないなあ、とこの盤を聴く度に思うのだ。
1972年と言えば、クロスオーバー・ジャズやジャズ・ロックが流行っていた頃。そんな時期に、こんなに硬派で素敵なモード・ジャズを録音していたなんて、意外とBN-LAシリーズは隅に置けない。録音も良く、モード・ジャズとして一流の内容。確実に斜陽の時代だったが、さすがはブルーノート・レーベルである。
東日本大震災から8年1ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
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