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2019年3月30日 (土曜日)

新しい「エレジャズ・ロック」

欧州ニュー・ジャズの老舗レーベル「ECM」。このレーベル、ジャズの演奏形態やトレンドにはかなり寛容で、というか、かなり懐が深くて、メインストリーム系のジャズの中ではモードからフリー、アブストラクト、スピリチュアルまで守備範囲は広く、エレクトリック系ではロックでいうところの「プログレッシブ・ロック」の要素を吸収したジャズ・ロックなどにも柔軟に対応している。
 
Barre Phillips『Mountainscapes』(写真左)。1976年3月の録音。ちなみにパーソネルは、Barre Phillips (b), John Surman (ss,bs,b-cl,syn), Dieter Feichtner (syn), Stu Martin (ds, syn), John Abercrombie (g・track8のみ)。リーダーのバーレ・フィリップスはベーシスト。カルフォルニア生まれ。キャリアの初期はアメリカ。1960年代後半に欧州に渡って、その後は欧州で活動。そんな流れの中でのECMでの録音だったのだろう。
 
アルバムの冒頭から数分聴いているだけで、思わず「ニンマリ」。これってプログレッシブ・ロック(略して「プログレ」)やん。基本はバーレのベースとサーマンのサックス、マーチンのドラムのトリオ。そこに、フィヒトナーのシンセが入ってくる。ビートは明らかに8ビートがメインで、整然としたリズム&ビートをベースとした演奏パートはメインの旋律も整然としていて、演奏全体の雰囲気は明らかに「プログレ」。
 
 
Mountainscapes-1  
 
 
そして、その整然とした8ビートが変則ビートに変化すると、演奏全体の雰囲気はフリーなエレクトリック・ジャズにガラッと変わる。モード奏法の様な柔軟度の高いフレーズがメインになる。メインの旋律のスペース感溢れる浮遊感が半端ない。モーダルな浮遊感のある旋律となると演奏全体の雰囲気は「プログレ」では無くなり、演奏の雰囲気は「モーダルなジャズロック」に切り替わる。
 
ラストの「MountainscapesⅧ」では、ECMのお抱えギタリスト、ジョンアバが参加。捻れに捻れた浮遊感のあるエレギで、フリーキーなフレーズを連発する。アルバムに散りばめられている演奏形態は「プログレ」「モーダルなジャズロック」「フリーキーなジャズ」という3つの要素をクロスオーバーした、即興演奏を織り込んだニュー・ジャズである。
 
この盤の雰囲気を一言で言うと、プログレッシブ・ロックな要素を取り込んだ、新しい「エレジャズ・ロック」。ジャズの演奏形態やトレンドに寛容で懐の深いECMレーベルならではの音世界である。面白いのは、演奏メンバーが皆、基本的にジャズ畑のミュージシャンなので、演奏がプログレ寄りになっても、どっぷりプログレにはならない。あくまで、この盤の音世界は「即興がメインのジャズ」。
 
 
 

東日本大震災から8年。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
 
Never_giveup_4
 
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