クールで大人のテナーが清々しい
Mark Turner『Yam Yam』を聴いて、僕はこう書いた。マーク・ターナーのテナーは「クール・テナー」。芯のある浮遊感と繊細で知的なニュアンス。ブラッド・メルドーの弁を借りると「マーク・ターナーのホーンのサウンドは見紛いようがない。暖かく、深い優しさをたたえ、甘たるくなく、まさにこれぞ誘惑の味がする」。
それまでのジャズ・テナーの印象である「たくましい、豪快といった男性的なイメージ」を覆す、クール・スタイルのテナーが清々しい。スムース・ジャズのテナーをメインストリーム・ジャズにそのまま持って来た様なイメージ。それでいて、芯のしっかりある音で説得力がある。ユニークなスタイルのジャズ・テナーである。僕はすっかりファンになった。
Mark Turner『In This World』(写真左)。1998年6月の録音。ターナーのメジャー・レーベル第2弾。ちなみにパーソネルは、Mark Turner (ts), Brad Mehldau (ac-p, el-p), Kurt Rosenwinkel (g), Larry Grenadier (b), Brian Blade (ds), Jorge Rossy (ds)。今から見れば、なんと錚々たるメンバーではないか。現代ネオ・ハードバップの精鋭達が大集合である。
メインは、ターナーのテナーをフロントに、メルドー=グラナディア=ブレイドのピアノ・トリオがリズム・セクションを担う。印象的で耽美的なギターはローゼンウィンケルで3曲に客演、ロッシーのドラムは2曲でブレイドとツインドラムを形成する。このワンホーン・カルテット+αの編成は、様々な曲調、曲想の演奏をいとも容易く、柔軟に展開する。素晴らしいポテンシャルである。
オーソドックスなネオ・ハードバップから、ショーターばりの捻れて思索的な展開、フリーな演奏から8ビートのジャズロック風の演奏まで、バラエティーの富んだ内容なんだが、不思議と統一感がある。その統一感を現出しているのが、マーク・ターナーのテナー。彼のクール・スタイルなテナーが一貫しているが故の「1本筋の通った統一感」が清々しい。
バックの演奏はいずれも素晴らしいが、特筆すべきはブレイドのドラミング。しっかりとバッキングに回りながら、鋭さと繊細さの相反した表現を融合した柔軟度の高いドラミングは当代随一のものだろう。クールで大人なネオ・ハードバップ。この盤、じっくり聴き進めていくと、ジワジワその良さが沁みてきます。
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