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2019年3月31日 (日曜日)

今までに聴いたことの無いジャズ

クリス・チーク(Chris Cheek)というサックス奏者がいる。いわゆるブルックリン派の代表格のサックス奏者。1968年生まれなので、今年で51歳になる。1990年代、ポール・モチアンのエレクトリック・ビバップ・バンドでその名をアピール、NYのブルックリンを中心としたシーンの中核を担うメンバーに成長、同じサックス奏者のマーク・ターナーと共に、新しいサックスのサウンドを生み出し、深化させている。
 
チークのサックスは、今までのジャズに無い雰囲気である。サックスであれば、それまでは必ず、コルトレーンの影響を受けていたし、コルトレーンの奏法のどこかを反映したフレーズが必ず見え隠れした。が、チークの(ターナーも同様なのだが)サックスは違った。それまでの「ジャズ・サックス」の概念を一掃し、全く新しい「ジャズ・サックス」を世に出した。
 
まずもって、4ビートなどどこにも無い。いわゆる1970年代以降の「ニュー・ジャズ」である。加えて、バップ・フレーズの欠片も無い。サックスは絶対に熱く吹かれることは無い。どこまでもクールに淡々と情感を内に秘めつつ、淡々と音を紡いでいく。そんな音世界である。そんな音世界を支えるアレンジも、今までに無い斬新なアレンジ。つまりは今までに聴いたことの無いジャズがこの盤に詰まっていた。
 
 
Vine  
 
 
Chris Cheek『Vine』(写真左)。1999年、NYでの録音。Chris Cheek (ts,ss,comp), Brad Mehldau (p,fender rhodes), Kurt Rosenwinkel (g), Matt Penman (b), Jorge Rossy (ds) 。今の目で見ると、錚々たるメンバーである。現代ジャズ・ピアノの代表格の一人、ブラッド・メルドー、これまた現代ジャズ・ギターの中堅、クルト・ローゼンウィンケル。この二人の名前だけでも「おお〜っ」となる。
 
計8曲すべてチーク自身のオリジナル。これがまた、新しい響きを宿している。4ビート無し、バップ・フレーズ無し、どこまでもクールに淡々と情感を内に秘めつつ、淡々と音を紡ぐテナー。演奏の形式はしっかりと旧来のジャズの通り押さえられているので、フリー・ジャズを聴く様な苦行は無いが、曲のフィーリングは旧来のジャズとは全く異なるものなので、ジャズ者の中でもはっきりと「好き嫌い」が分かれるだろう。
 
といって、この新しい感覚のニュー・ジャズを理解出来ないと駄目だ、とは思わない。これもジャズ。旧来のジャズもジャズ。ジャズは懐深く、裾野の広い音楽ジャンル。だからこそ面白い。でも、このチークのニュー・ジャズって、我が国のジャズ者の間で広く認知され、相応の人気を獲得するには、まだまだ時間がかかる様な気がしている。旧来のジャズにも強烈な魅力があるからなあ。
 
 
 
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Never_giveup_4
 
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