峰厚介の約8年振りとなる新作
日本のジャズも歴史を積み重ねてきた。戦後まもなくから徐々に積み上げ、1956年には穐吉敏子が、1962年には渡辺貞夫が渡米し、バークリー音楽院に留学している。1960年代には日本のジャズは若干停滞するが、1960年代終盤以降はジャズマンの数も一気に増え、1970年代後半のフュージョン・ブームにも乗り、ジャズは日本の主要な音楽ジャンルとして確固たる地位を確保している。
1970年代以降、活躍し続け、現時点において、日本ジャズのレジェンドとなったジャズメンも多く存在する。頼もしいことこの上無し、である。21世紀に入っても、日本ジャズのレジェンド達は、誰かしらが毎年、好盤をリリースしている。ジャズの場合は年齢を重ねるに従って、演奏テクニックが変に落ちない限りは、充実の一途をたどる傾向があるので、好ましいことこの上無し、である。
峰厚介『Bamboo Grove』(写真左)。今年1月のリリース。2018年8月の録音。日本ジャスのテナーのレジェンド、峰厚介(みね・こうすけ)の最新作である。ちなみにパーソネルは、峰厚介 (ts, ss), 清水絵理子 (p), 須川崇志 (b), 竹村一哲 (ds)。峰のテナー1本フロントのオール日本人ジャズメンでのカルテット編成。現在の日本人ジャズの力量を推し量るに最適な盤である。
前作から約8年振りとなる新作であるが、一言で言うと「良い内容」。峰のテナーは申し分無い。ヴァイタルでエモーショナル、音が艶やかで伸びが良い。テクニックも申し分無く、1944年2月生まれの75歳とは思えない「溌剌さ」である。資料によると、レコーディング・セッションはセパレートブースを使わず、ワンルームでの一発録り、とのこと。自分のテナーに自信が無いと出来ない録音環境なんだが、この一発録りによって、ライブ録音独特の適度なテンションと疾走感を得ているのだから立派だ。
加えて、収録曲は7曲全てが峰の「自作」。まったく意欲的な75歳である。自作曲は、当然当人にとって吹きやすいのだろう、バップ風にモーダルに自由自在、変幻自在にテナーを吹き上げていく。バックの清水のピアノを中心としたリズム・セクションも良好。柔軟度が高く、硬軟自在、緩急自在なピアノ・トリオは結構、聴き応えがある。このピアノ・トリオだけを切り取って、特別にトリオ演奏を聴いてみたい。そんな気にさせる堅実で爽快なバッキング。
岡本太郎記念館の館長である平野暁臣をプロデューサーに迎え、 タワーレコードがスタートしたジャズレーベル「Days of Delight (デイズ・オブ・ディライト)」。なかなかの好盤をリリースしてきたなあ。今後のリリースが楽しみになってきた。
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