ジャズ喫茶で流したい・142
ピアノ・トリオはいつ聴いても楽しい。簡単そうに見えて、結構、弾きこなすに難しい、打楽器と旋律楽器の両方の性質を持つ楽器のピアノ。この難物楽器のピアノがメインに、これまた、リズム楽器と旋律楽器の両方の性質を持つベースが絡み、究極の打楽器のドラムがリズム&ビートを担う。いわゆる「職人集団」のパフォーマンス。これが聴いていて楽しい理由。
Jason Lindner, Giulia Valle, Marc Ayza『1,2,3, Etc.』(写真左)。2001年12月3&4日、バルセロナでの録音。ちなみにパーソネルは、Jason Lindner (p), Giulia Valle (b), Marc Ayza (ds)。ピアノのジェイソン・リンドナー、どこかで聴いた名だなあ、と調べてみたら、デヴィッド・ボウイ『★(ブラックスター)』に参加した気鋭の鍵盤奏者でした。
まず、そのジェイソン・リンドナーのピアノが印象深い。耽美的ではあるが力感溢れる明快なタッチ。ハンマー打法を彷彿とさせるパーカッシヴな左手。強弱、抑揚、明暗と複雑な表現をシンプルに弾きこなす右手。躍動感溢れ、逆に暖かな繊細さとの対比が見事。久々に注目のピアニストやなあ、と当時感心したものです。
ジュリア・ヴァーレは女流ベーシスト。僕は最初「女流」と聞いてビックリした。この盤を聴いたら判るのだが、ベースがゴリゴリ、ブンブン、思いっきり胴鳴りしている。鋼のしなりの様なベース弦の響きも生々しい。こんなベースを聴いて、これ「女流ベーシストやで」と言われたら、え〜っ、となりまっせ(笑)。ファンクネスが希薄なので、出身はどこかな、と調べたら、イタリアのサンレモでした。納得です。
マーク・アイザのドラミングはユニーク。ちょっとラフに構えたグルーヴ感は独特のスイング感と疾走感を与えてくれます。この人のドラミングにもファンクネスが希薄というか皆無。堅実で強烈なオフビートに裏打ちされたポリリズム。それでいて、しっかりリズム&ビートの筋が一本通っている。じっくり聴き耳立てていると、更にその素晴らしさが判る、そんな職人芸的な玄人好みのドラミング。出身はバルセロナとのこと。これも納得ですね。
この盤の選曲については、セロニアス・モンク、マッコイ・タイナー、クレア、フィッシャー、スティービー・ワンダーなどの作品を取り上げていて、ジェイソン・リンドナーのピアノの個性の源を感じさせてくれます。エレピも弾いていて、変に難しくせず、シンプルで良好。いや〜、この『1,2,3, Etc.』、なかなか聴き応えのあるピアノ・トリオ盤です。ジャケットもジャズらしからぬ可愛いイラスト。これも良し(笑)。
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