« アラスカを彷彿とする演奏の数々 | トップページ | JLCOのジョン・ルイス作品集 »

2019年2月26日 (火曜日)

「サラッとした耽美的な」響き

David Hazeltine(デビッド・ヘイゼルタイン)。米国ミルウォーキー出身のジャズ・ピアニスト。1958年10月生まれなので、現在60歳の還暦。大ベテランの域である。同じ世代なので親近感もある。彼と出会ったのは、ヴィーナス・レーベル盤『Alice in Wonderland』であった。バップからモードまで、幅広いスタイルに精通し、その多様性溢れるフレーズが個性。確かなタッチの響きは「硬派で耽美的」。

そんなヘイゼルタインの最新作になる。David Hazeltine『The Time is Now』(写真左)。2018年5月23日の録音 。ちなみにパーソネルは、David Hazeltine (p), Ron Carter (b), Al Foster (ds)。レジェンド級をベースとドラムに持って来て、期待以上の化学反応が起こるか、平凡な水準レベルで終わるか、真ん中の無い、思い切ったメンバーの選定である。聴き前から期待感が膨らむ。

聴いてみると、冒頭の自作のタイトル曲「The Time is Now」で既によく判るが、サラッとしたシンプルで耽美的なアレンジがこの盤の特徴。ナルシストを彷彿とさせる様な「ディープな耽美的」な表現では無く、ビ・バップに通じる様な、硬派で堅実でサラッとした耽美的な響き。テンポはミッドテンポが多くて、ゆったり落ち着いて聴くことが出来る。ファンクネスは希薄だが、タッチはハッキリとしていて躍動感がある。
 

The_time_is_now  

 
ヴィーナス・レコード時代の「ディープな耽美的な」響きではなく、「サラッとした耽美的な」響きがこのトリオ演奏の身上。アレンジもサラッとしているが、聴き応え十分に感じるのは、ヘイゼルタインのピアノのタッチが明快で、硬派で堅実で耽美的なフレーズがクッキリと浮き出てくるからだろう。3曲目の「Smoke Gets in Your Eyes」や9曲目の「In a Sentimental Mood」の様な、超有名なスタンダード曲を聴くと良く判る。

ロン・カーターのベースが良い。以前の様に前へ前へ出なくなって、楽器のピッチが合うようになって、落ち着いた良い感じになってきていたのは知っていたが、それにも増して、この盤でのロンのベースは実に雰囲気がある。ガッチリ構えて、堅実かつ自由度の高いベースでフロントを鼓舞する。アルのドラミングは相変わらず味が合って立派。伴奏上手なドラミングの好例だろう。バッキングとして実に「粋」なドラミングである。

良いピアノ・トリオ盤だと思います。途中、どっかで聴いた曲やなあ、と思っていたら、James Taylorの「Don’t Let Me Be Lonely Tonight」でした。ピアノ・ソロでカヴァっていて素敵です。現代の洗練されたネオ・ハードバップなピアノ・トリオ。そんな演奏を平均年連60歳以上のトリオが演る。ならではの円熟味と洗練さが心地良くて「粋」。ピアノ・トリオ者の皆さんにお勧めの一枚です。

 
 
東日本大震災から7年11ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。 

Never_giveup_4

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。
 

« アラスカを彷彿とする演奏の数々 | トップページ | JLCOのジョン・ルイス作品集 »

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 「サラッとした耽美的な」響き:

« アラスカを彷彿とする演奏の数々 | トップページ | JLCOのジョン・ルイス作品集 »

リンク

  • まだまだロックキッズ(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    この「松和・別館」では、懐かしの「1970年代のロック」盤の感想や思い出を率直に語ります。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、70年代ロックの記事を修正加筆して集約していきます。
  • 松和の「青春のかけら達」(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    この「松和・別館」では、懐かしの「1970年代のJポップ」、いわゆるニューミュージック・フォーク盤の感想や思い出を率直に語ります。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、70年代Jポップの記事を修正加筆して集約していきます。           
  • AORの風に吹かれて(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    AORとは、Adult-Oriented Rockの略語。一言でいうと「大人向けのロック」。ロックがポップスやジャズ、ファンクなどさまざまな音楽と融合し、大人の鑑賞にも堪えうるクオリティの高いロックがAOR。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、AORの記事を修正加筆して集約していきます。  

カテゴリー