日本人ドラマーの2018年の新盤
ジャズ雑誌「ジャズライフ」の2018年度「ジャズ・アルバム・オブ・ザ・イヤー」が発表された。記事をつらつら読んでいて、今となっても未だにジャズの新盤はコンスタントにりりーすされているんやな〜、と感心することしきり。特に21世紀に入って、日本のジャズ新盤が明らかに充実してきたのは頼もしい限りである。
日本人は黒人じゃないので、真のジャズはできない、なんて的外れな評価はもはや過去の話で、日本人ジャズには日本人ジャズなりの良さがある。それをしっかり認識する中で、米国でも欧州でも無い、日本人ジャズを表現できる環境が整ってきたんだろう、と思う。
大坂昌彦『Tricollage(トリコラージュ)』(写真左)。2018年9月のリリース。日本ジャズのドラマー、大坂昌彦のリーダー作。ドラマーがリーダーのアルバムで、随所でドラミングにテクニックを披露しつつ、自らが考える「現代のネオ・ハードバップ」を、様々なゲストを呼んで表現する、という企画盤的雰囲気のアルバム。
1995年にリリースした大坂の初リーダー作「トゥエルブ・カラーズ」で採用した、ドラム&ベースを固定し、多数のゲストをフィーチャーしてトリオ演奏を楽しむコンセプトを踏襲して作成されたもの。2台ベース+ドラムという特殊なトリオ編成の音も収録されていて、とにかく聴いていて楽しい。演奏のベースは明確に「ネオ・ハードバップ」。収録曲と曲毎のゲストは以下の通り。
1. A Night In Tunijia(チュニジアの夜)feat. 曽根麻央 <tp>
2. I Mean You(アイ・ミーン・ユー)feat. 椎名 豊 <p>
3. Doxy(ドキシー)feat. 馬場孝喜 <g>
4. Everything Happens To Me
(エヴリシング・ハプンズ・トゥ・ミー)feat. 吉岡秀晃 <p>
5. Airegin(エアジン)feat. 大森 明 <a.sax>
6. Out Of Nowhere(アウト・オブ・ノーホエア)feat. 宮之上貴昭 <g>
7. Unpredictable Life(アンプレディクタブル・ライフ)feat. 西口明宏 <t.sax>
8. Peaceful Lament(ピースフル・ラメント)feat. 山田拓児 <s.sax>
9. Naima(ネイマ)feat. 今泉正明 <p>
10. Tea For Two(二人でお茶を)feat. パット・グリン <b>
11. Donna Lee(ドナ・リー)feat. 岡崎好朗 <tp>
<ボーナストラック>
12. But Not For Me(バット・ノット・フォー・ミー)feat. 馬場孝喜 <g>
選曲がスタンダード曲中心なのもこのアルバムの良いところ。トリオ演奏ということで音が「シンプル」。楽器の音の抜けが良くて、様々なニュアンスの音が捉えられている。演奏内容はどの曲も充実しており、全12曲、聴き通していて、ダレることが無い。日本人のジャズなので、ファンクネスはほぼ皆無なのだが、切れ味の良いオフビートが意外にジャジー。
ネオ・ハードバップの「今」と日本人ジャズのレベルの高さを再確認できる好盤です。一聴をお勧めしたいですね。
東日本大震災から7年10ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
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