ジャズ喫茶で流したい・137
バリトン・サックス(略して「バリサク」)の音が大好きだ。サックスについては、自分でも中学時代、アルト・サックスを吹いていたので、親近感がある。そんな中、好きな順に挙げると、バリトン → アルト → テナー → ソプラノの順になる。バリサクの音は良い。魅力的に響く重低音、肉声に近い、歌心溢れる中高音。
肺活量がかなり必要で、普通の人では吹くのが一仕事のバリサクではあるが、出てくる音は一番サックスらしい、と僕は思っている。そんなバリサクを吹きこなすジャズメンは少ないのだが、何時の時代も必ず、魅力的なバリサク吹きがいる。米国東海岸にも西海岸にも、魅力的なバリサク吹きがいる。今回は、米国西海岸ジャズの魅力的なバリサク吹きの好盤をご紹介する。
Serge Chaloff『Blue Serge』(写真左)。1956年3月14 & 16日。ちなみにパーソネルは、Serge Chaloff (bs), Sonny Clark (p), Philly Joe Jones (ds), Leroy Vinnegar (b)。サージ・チャロフ(Serge Chaloff)は当時では珍しいバリサク吹き。この盤は、サージ・チャロフのバリサクの素晴らしさが体験できる好盤である。
この盤のチャロフのバリサクは「唄うが如く」である。さりげなく、あっさりと心地良く、唄うが如くバリサクを吹く。これが実に良い。「歌心溢れるブロウ」というのは、このチャロフのバリサクの形容にピッタリ。楽器の図体が大きく、吹き回しに結構苦労するバリサクなんだが、チャロフは事も無げに、さり気なく、流麗なフレーズを「唄うが如く」吹き上げていく。
バックのソニー・クラークのピアノも良い音出している。僕はソニー・クラークのピアノが好きで、この盤でも暫く聴いていて、「このピアノって、ソニクラちゃう」と思った。この時期のクラークのピアノの特徴は、ジャストかやや前ノリで、そういう点ではソニクラと思わないのだが、ソニクラのピアノの特徴である「粘っこく転がすようなコンピング」がこの盤でも聴くことが出来る。そこで、これはソニクラやなあ、と思うのだ。
そんな絶妙なバッキングをウケて、チャロフはバリサクを魅力的に吹き上げていく。米国西海岸での録音が故、ウエストコースト・ジャズの雰囲気が芳しい。演奏のアレンジも秀逸で、それぞれのメンバーのアドリブ展開も小粋である。バリサクという重たい楽器を、重さをまったく感じさせずに、軽やかに流麗に吹き上げる。そんなチャロフがめっちゃ魅力的である。
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