個性全開のセカンド盤 『Don't Try This at Home』
マイケル・ブレッカーのテナーは個性的だった。宣伝では「コルトレーンの再来」なんて表現されたが、どうして、ストレートなブロウがコルトレーンと同じだけで、アドリブ・フレーズの展開、モーダルな音の選び方、運指の癖、どれもが個性的で、コルトレーンとは似ても似つかぬもの。しかも、フュージョン・ジャズにも通じる、コンテンポラリーな純ジャズの音世界が、1970年代〜1980年代のテナー奏者ならでは、と強く感じる。
Michael Brecker『Don't Try This at Home』(写真左)。Impulseレーベルからの2ndアルバム。1988年のリリース。ちなみにパーソネルは、Michael Brecker (ts, EWI), Mike Sternx(g), Don Grolnick (p), Charlie Haden, Jeff Andrews (b), Jack DeJohnette, Adam Nussbaum, Peter Erskine (ds), Mark O'Connor (vln), Herbie Hancock, Joey Calderazzo (p), Judd Miller, Jim Beard (syn)。豪華メンバーが脇を固めて、どんな曲でもどんとこい、という布陣。
初ソロ盤に比べて、オリジナリティ豊かなサウンドが展開されている。4ビートに拘らない、新しい感覚のニュー・ジャズが心地良い。エレクトリックなのかアコースティックなのか、4ビートなのか16ビートなのかといった固定概念に拘らない、柔軟で多様な音世界が実にユニーク。1988年なので、純ジャズ復古後のネオ・アコースティックに手を染めるかと思いきや、マイケルはそんな当時のジャズ界のトレンドに目もくれず、1970年代以降のニュー・ジャズの音世界に没入している。
恐らく、Impulseレーベルとしては「現代のJohn Coltrane」としてセールス的にも大きな期待を寄せていたはずで、この期待と自分のやりたいことの狭間で、マイケルは結構揺らいでいたのかなあ、と思う。この盤はどちらかといえば「やりたいことをやる」マイケルが存在していて、後の1990年代のマイケルの音世界に直結する、オリジナリティ豊かなニュー・ジャズなサウンドがなかなか個性的。
この盤を聴いていて、マイケルってウェザー・リポートが好きだったのかなあ、とも感じます。良く似た音の展開が見え隠れするんですが、そこはマイケル、展開のコピーに終始すること無く、ウェザー・リポートよりもマイルドでアーバンな音世界を展開していて、これはこれで実に個性的な仕上がりになっている。こういうところがマイケルの非凡なところ。
アルバム全体の印象は、マイケルの音世界のプロトタイプという印象だが、演奏全体も充実していて、とても内容の濃いコンテンポラリーな純ジャズに仕上がっている。マイケルはEWIをかなり使用しているので、硬派なジャズ者の方々には受けが悪いのかもしれません。が、このEWIの音が僕は大好物。電気楽器も効果的に使用されていて、1980年代のコンテンポラリーな純ジャズ盤として、意外と僕は愛聴しています。
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