ECMが考えるエレ・ジャズ
ジャズ盤鑑賞の今年のトピックの1つは、「ECMレーベル」のストリーミング解禁である。「静寂の次に美しい音(The Most Beautiful Sound Next To Silence)」を合言葉に、ジャズを主とした作品を次々にリリース。透明感のある音と洗練されたジャケット・デザインで人気を博したレーベルで、ストリーミングには難色を示したままであったのだが、突如、解禁に踏み切ったのだ。この報にはビックリした。
「ECMが推奨するメディアはこれまで通りCDとレコードですが、まず優先すべきことは音楽を聴いてもらうことです。CDやレコードなどのフィジカル・カタログと著作者は私たちにとって極めて重要なものです。しかし、近年、我々ECMとそのミュージシャンたちは、無許可のストリーミングやビデオのシェア、ブートレッグ、非合法ダウンロードなどに悩まされてきました。著作権が正しく尊重される範囲で、我々の楽曲にアクセスできるようにすることが重要だったのです」
以上がストリーミング解禁に至った公式見解。なるほど、著作権を守るにはこれしか無かった、ということか。納得。しかし、我々、ジャズ盤鑑賞者については、実に喜ばしいことであった。CDでは未リリースや廃盤状態にあるものがあったのだが、ECMレーベルのカタログに挙がった盤のほとんどがストリーミングで鑑賞できるのだ。こんな時代が来るとは思わなかった。早速、カタログの最初からECM盤を聴き直しである。
Dave Liebman『Drum Ode』(写真)。1974年5月の録音。ECMの1046番。ちなみにパーソネルは、Dave Liebman (ss, ts, alto-fl), Richard Beirach (el-p), Gene Perla (b), John Abercrombie (g), Bob Moses, Jeff Williams (ds)のダブル・ドラムのクインテット構成に、コンガやタブラ、ボンゴ、その他パーカッションが絡む。ボーカルも参加している。エレ・マイルスのグループに参加していたサックス奏者、デイブ・リーヴマンのECMでのリーダー作である。
ECMとリーヴマン、ってなんかイメージが合わないのだが、確かにこの盤の内容、ECMレーベルとしては「異色盤」である。タイトル通りリズムに重点が置かれ、パーカッション+ドラムだけで総勢8名が名を連ねている。ビートをメインに添えたエレ・ジャズ。当時のエレ・マイルスから、ファンクネスと重量感を落として、スッキリ判り易くした感じの内容。それをバックにリーヴマンがエレ・マイルスのグループに参加している時と同じイメージでサックスを吹く。
この盤では、デイブ・リーヴマンのサックスがしっかりと目立っている。吹くフレーズは今となっては「金太郎飴」なんだが、当時の「時代の音」であり、エレ・マイルスの傍らにいたリーブマンの「エレ・ジャズとしての回答」と感じている。意外とバイラークのエレピが良い響き。ECMレーベルが考える「エレクトリック・ジャズ」として、聴き応えのある内容である。
★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。
« ジャズ喫茶で流したい・136 | トップページ | 猫のジャケットがとても可愛い »
コメント